はじめに
一人で会社をやっていると、営業も経理も制作もお客さま対応も全部自分でやることになります。一人社長は、事実として何でもやる人です。
ただ、お客さまが選ぶ理由は「何でもできること」ではありません。自分が困っていることを解決してくれるかどうかです。「何でもできます」と言われても、頼む側は何を頼めばいいのかわかりません。人は、自分の悩みを解決してくれる専門家を探しています。
だから一人社長には、何でもやる力と、選ばれるための専門性の両方が必要になります。
書いているのは、ソエルコト代表の小南です。2006年に会社を立ち上げ、社員2人から4人の小さな会社を5年経営したのち、一人社長になって16年になります。
私は学生時代からWeb制作とWeb運用を30年続けてきました。いま専門と呼べる領域は3つありますが、この記事ではそのうちの一つ、習い事教室・学習塾の生徒募集を例に話を進めます。
10年ほど、教室の生徒募集プロデュースと先生方のお悩み相談をとことんやり続けた結果、「生徒募集ならこの人」と言われる位置を取れました。専門を絞ると何が起きるのか、その実感をお伝えします。
この記事では、スペシャリストとは何かを整理したうえで、一人社長がスペシャリストを目指すべき理由を5つに分けてお伝えします。
スペシャリストとは
スペシャリストは、特定の分野を深く掘り下げて、その分野の難しい問題を解決したり、質の高い成果物を提供できる専門家を指します。
医師や弁護士のように資格を持つ人だけではありません。エンジニア、デザイナー、研究者、そして特定の業界に詳しい人も含まれます。大事なのは資格の有無ではなく、「この分野のことなら、この人に聞けば間違いない」と周りから認識されている状態です。
ジェネラリストとの違い
スペシャリストの反対にあるのがジェネラリストです。幅広い分野の知識を持ち、全体を見渡して判断や調整をする人ですね。
両者の違いを整理すると、こうなります。
| 比較する項目 | スペシャリスト | ジェネラリスト |
|---|---|---|
| 知識の広さ・深さ | 一つの分野を深く掘り下げている | いろんな分野の基本を幅広く知っている |
| 物事の見方 | 専門領域を掘り下げて考える | 全体を見渡して考える |
| 得意なこと | 難しい問題の解決、質の高い成果物、専門的な判断 | 全体を見た判断、関係者の調整、変化への対応 |
| 弱くなりやすいところ | 専門の外が見えにくくなる | 一つひとつの知識が浅くなる |
| お客さまから見た印象 | 「この人に頼めば解決しそう」と伝わりやすい | 何を頼める人なのかが伝わりにくい |
| 一人社長にとっての役割 | お客さまから選ばれるための武器になる力 | 事業を回すための土台になる力 |
一人社長が置かれているのは、この両方を求められる立場です。事業を回すにはジェネラリストの力が要る。お客さまから選ばれるにはスペシャリストの力が要る。どちらかを選べる話ではありません。
「専門性」は資格のことではない
スペシャリストと聞くと、難関資格や高度な技術を思い浮かべる方が多いかもしれません。でも一人社長にとっての専門性は、そこではありません。
専門性とは、お客さまの課題に対して「この人なら解決できそうだ」と思われる状態です。問い合わせが来たときに、その課題について具体例をいくつも即答できるかどうか。同じような課題を何度も解決してきた実績があるかどうか。ここが専門性の中身です。
資格がなくても、絞った領域で経験を積み上げていけば、専門家として認識されます。
一人社長が「唯一無二のスペシャリスト」を目指すべき5つの理由
一人社長が専門性を持つことの価値は、次の5つに整理できます。
- 価格で比べられない
- 続けるほど強くなる
- 絞れば一番になれる
- 探して見つけてもらえる
- 仕事が面白くなる
一つずつお話しします。
理由1:価格で比べられない
専門性がはっきりしていると、お客さまはあなたを比べる相手がいなくなります。
「同じことをやってくれる人が他にいない」状態になるので、値段で判断されません。逆に「何でもできます」と打ち出していると、何を頼める人なのかが伝わらないので、選ばれる理由が価格しか残らなくなります。
私は習い事教室・学習塾の生徒募集の専門家として自分を打ち出しています。おそらくこの分野では一番詳しい人という位置づけでやってきました。だから、生徒募集で悩んでいる先生方が、相談したくて指名でお問い合わせをくださいます。
「生徒募集に強い人を探していた」と言われることが、そのまま専門性の価値です。誰でもいい仕事ではなく、この人に頼みたいという仕事が来ます。
理由2:続けるほど強くなる
専門性は、時間が経つほど積み上がっていきます。
同じ領域の仕事を続けていると、前の案件で得たことが次に効いてきます。「この業種はここでつまずきやすい」「この状況なら、まずこれを直すべき」という判断が早くなります。ゼロから考える回数が減っていきます。
私はこれまで、何百人もの習い事教室の先生とお話をしてきました。ジャンルはバレエ、フルート、ギター、ボーカル、英会話、格闘技など、本当にさまざまです。それだけの数を重ねてきたので、生徒募集の相談にはほとんど何でも答えられるようになりました。
そのなかで、どのジャンルの教室にも当てはめられる「生徒募集の方程式」も作りました。個別の対応を積み重ねた結果、共通する型が見えてきたということです。
専門を絞ることは、経験を一箇所に集めることでもあります。同じ場所を掘り続けるから深くなります。
理由3:絞れば一番になれる
お客さまは、自分にとって一番の相手を選びます。二番や三番はなかなか選ばれません。
大きな市場でその一番を取るのは簡単ではありません。だから市場を絞ります。絞った小さな市場で一番を取り、そこから少しずつ範囲を広げていく。この順番のほうが現実的です。
私は八王子でWeb制作をやっていた時期があります。当時は自分では差別化しているつもりで、地域で一番の制作会社だと思っていました。実績も成果もたくさん持っていたので、そう思うだけの根拠はあったんです。
それでも、地域の企業や店舗の仕事は取れませんでした。いま振り返れば、お客さまから見ればただのWeb制作会社・広告制作会社だったということです。
一方で、習い事教室・学習塾の生徒募集に特化したホームページ制作は取れていました。地域では当社だけ、全国を見てもほとんどありませんでした。案件の規模や金額は小さくても、ここなら一番を目指せると考えました。
いまは習い事・学習塾の生徒募集では、日本で一番と言っていい位置まで取れています。八王子のWeb制作会社としては地域の一番すら取れなかったのに、絞ったら日本一が取れたということです。
理由4:探して見つけてもらえる
専門領域がはっきりしていると、困っている人のほうから見つけてくれます。
理由1が「選ばれ方」の話だとすれば、こちらは「出会い方」の話です。「生徒募集」で検索する人は、まさにその専門家を探しています。専門を絞っているから検索でも上位に出やすく、来てくださる方も最初から目的がはっきりしています。紹介も同じで、「そういうことなら、あの人がいるよ」とつないでもらいやすくなります。
私は外に営業に行くことは一切ありません。マーケティングで営業ツールになるWebサイトを作り、そこからお問い合わせをいただく形にしています。専門性がはっきりしていることが、そのまま集客の仕組みになっています。
専門を絞ると仕事が減ると思われがちですが、実際は逆です。絞ったほうが見つけてもらえます。
理由5:仕事が面白くなる
同じ領域を深く続けていると、仕事の中身そのものが面白くなります。
浅く広く受けていると、一件ごとに調べ直して、こなして、次に行く形になります。経験が積み上がらないのは理由2でお話ししたとおりですが、面白さも積み上がりません。
専門を持つと、お客さまの状況が深いところまでわかるようになります。
たとえば「生徒が集まらない」というご相談。表面に出てくる困りごとは同じでも、根本の原因や悩みは先生ごとに全部違います。自分の教室に自信を持てなくなっている方もいます。本当はやりたいことがあるのに、それができていない方もいます。生徒数ではなく、熱意を持った生徒さんに来てもらえていないことが本当の悩みだった、という場合もあります。
数を重ねていると、この違いに気づけるようになります。言葉になっていない部分まで見えてきます。そこまで踏み込めるから、いい仕事ができるし、自分も面白いんです。
この記事を書いているソエルコトも同じです。数多くの一人社長さんの悩みや課題を一緒に解決したり、右腕としてお手伝いをしたり、相談に乗ってきた経験があって、それを活かして始めました。一人社長のパートナーという領域で、ここでもスペシャリストを目指しています。
専門を持つことは、同じ相手と深く関わり続けることでもあります。それが仕事の面白さになります。
専門性だけでは事業が回らない
ここまで専門性の強みを挙げてきましたが、専門性だけあっても一人社長の事業は成り立ちません。
どれだけ高い専門性があっても、お客さまに見つけてもらえなければ仕事は来ません。契約や請求の管理ができなければお金は回りません。専門の仕事に集中しすぎて、経営の判断がおろそかになると事業そのものが止まります。
一人社長は、専門家であると同時に経営者です。マーケティング、価格の決め方、お金の流れ、契約のこと。こうした幅広い力が土台にあって、はじめて専門性が価値になります。
私自身、マーケティングも商品開発もお客さま対応も経理も自分でやっています。この土台があるから、専門性を仕事として成り立たせられています。
いろんなことができて、そのなかで突出した専門性、スペシャリストとして見せられる部分を持っている。これが一番強い形だと思っています。どちらが優れているかという話ではありません。
専門は一つでなくてもいい
「専門を絞る」と聞くと、一つに決めなければいけないと思われるかもしれません。でも、それぞれが絞られているなら、複数持っていて構いません。
私の場合は、専門と呼べるものが3つあります。
一つは習い事教室・学習塾の生徒募集です。マーケティングとWeb制作を組み合わせて、教室の生徒集客をプロデュースしています。これまで何百人もの教室の先生とお話をしてきて、いまはこの分野で日本で一番と言っていい位置まで取れています。
二つ目がホームページ作成の指導です。Web制作とWeb運用を30年続けてきました。大手企業や自治体のサイト、アイドルや声優やミュージシャンのサイト、全国の習い事教室のサイトを手がけ、デザインコンテストでグランプリを受賞したこともあります。その経験をもとに教室を開いていて、いまはAIを使ってホームページを作り、成果を上げる方法をお伝えしています。
三つ目が一人社長のパートナーという領域で、これがソエルコトです。数多くの一人社長さんの悩みや課題を一緒に解決したり、右腕としてお手伝いをしてきた経験を活かして始めました。
大事なのは数ではなく、一つひとつが「これなら誰にも負けない」と言える状態かどうかです。「何でもできます」と広げるのとは違います。それぞれの領域で、探している人に見つけてもらえて、指名で選ばれる。その状態を作れているなら、複数あっても専門性は成り立ちます。
一人社長にとっての幅広さについては、ジェネラリストとは?一人会社の一人社長が「最強のジェネラリスト」を目指すべき5つの理由で詳しくお話ししています。この記事と対になる内容です。

まとめ
一人社長が専門性を持つべき理由を5つ挙げました。
- 価格で比べられない。同じことをやってくれる人がいないので、指名で相談が来る
- 続けるほど強くなる。経験が一箇所に集まって、判断が早くなる
- 絞れば一番になれる。お客さまは自分にとって一番の相手を選ぶ
- 探して見つけてもらえる。困っている人のほうから来てくださる
- 仕事が面白くなる。表面的な要望の先が見えるようになる
そのうえで、専門性だけでは事業は回りません。幅広い力を土台にして、その上に専門性を立てる。この形が一人社長にとって一番強いと思います。
自分の専門性がまだ言葉になっていないなら
自分の強みは何か、何を専門にすればいいのか。これは一人で考えていても、なかなか答えが出ません。自分のことは自分で見えにくいものです。
ソエルコトでは、一人社長のための「課題発見セッション」を行っています。
これまでやってきたこと、いま得意なこと、お客さまから何で選ばれているのか。話していただくなかで、ご自身でも気づいていなかった専門性が言葉になっていくことがあります。こちらから答えを押し付けることはしません。一緒に整理して、あなた自身の答えに気づくための時間です。
無料相談会ではありません。無理な勧誘も一切しません。自分の強みが言葉にならないと感じたら、一度話してみてください。

