「自分がもう一人いたら」と、何回思ったことがありますか?
営業もする。制作もする。打ち合わせもする。問い合わせにも返信する。請求書も発行する。そして最後は、経営者として重要な判断もする。すべて、自分一人の仕事です。
「自分がもう一人いたら」。一人社長なら、一度はそう思ったことがあるはずです。私は何百回も思いましたw
ここまでの記事で、一人社長は全部一人でやるしかない、という話を書いてきました。じゃあ社員を雇えば解決するかというと、そういうわけでもない。むしろ社員を雇って余計に辛くなったり、しんどい目に遭っている社長さんも多いと思います。だからみんなの頭に浮かぶのは、結局これなんです。
もう一人の、自分。
子どもの頃に見た、パーマンのコピーロボットを覚えていますか?鼻をポチッと押すと、まったく同じ人間がコピーされる。あれ、この先10年、20年、いや100年経っても、なかなか実現できないことだと思います。でも、できたらすごいですよね。
この記事は、その夢に大真面目に挑んでいる話です。少しSFみたいな話になりますが、お付き合いください。
本当に欲しいのは、「手伝ってくれる自分」ではない
一番大きな資産は、自分の頭の中にしかない
「もう一人の自分」が欲しい理由を突き詰めると、単なる人手の話ではないことに気づきます。本当に欲しいのは「手伝ってくれる自分」ではなく、「自分と同じように考えられる自分」なんです。
一人社長の一番大きな資産は、会社でも、お金でもありません。長年かけて積み重ねてきた経験であり、失敗であり、判断基準であり、仕事に対する価値観です。
でも、その資産は、自分の頭の中にしか存在しない。だから、ときどき不安になります。もし自分が病気で働けなくなったら。もし突然、この仕事を続けられなくなったら。その瞬間、事業は止まり、何十年分の経験も一緒に失われてしまうかもしれない。
マニュアルには、できない
「だったらマニュアルを作ればいい」と言われることもあります。でも、それができないんです。
自分の判断は、「なんとなく、この方がいい気がする」「このお客様には、この言い方が伝わる」といった感覚で動いていることが多い。経験は体に染み込んでいる。だからこそ、言葉にするのが難しい。
ブログにも書いた。SNSにも投稿した。でも、それは知識の断片でしかありません。自分が何を考え、何を大切にしてきたのか。どんな失敗をして、何を学び、どう判断してきたのか。そんな「自分らしさ」は、ほとんど記録として残っていないんです。
分身には、二種類ある
仕事の分身は、意外と早く作れる
考えているうちに、分身には二種類あることに気づきました。「仕事の分身」と「人間としての分身」です。
仕事の分身は、実は意外と現実的です。前の記事で書いた自動化をどんどん進めていけば、自分がやるのと同じようなことがAIでもできるようになる。
自分の判断をどんどん残していけば、AIが自分と同じように判断できるようにもなる。頑張れば数日か1週間で、最初の形は作れるかもしれません。こちらは自動化やエージェントAIの担当分野です。
ポイントは、コピーすべきなのは「知識」ではなく「判断」だということです。知識なら、AIはもう私より持っています。足りないのは、「この場面で、あなたならどうするか」。それは、日々の判断を残し続けることでしか写し取れません。
人間としての分身は、一朝一夕にはできない
でも、人間としての分身、記憶や思い出まで含めた「自分という人間」のコピーとなると、話がまったく変わります。
人間の脳のコピーって考えたら、莫大で半端じゃない量の情報が必要になるんです。生まれてから今までの記憶、全部ですから。SDメモリを挿して脳の記憶をコピーできるなら一瞬ですけど、そんなことはできそうにない。
だったら、どうするか。時間をかけて、どんどん積み上げていくしかないんじゃないか。そう思ったんです。
「記憶の10年貯金」を始める
1日1件なら、10年で3,650件
仕組みは、拍子抜けするほどシンプルです。1行日記みたいな感覚で、その日の思い出を入れたり、ふと蘇った過去の記憶を入れたりする。それだけ。
ふとした瞬間に、子どもの頃の記憶とか、10年前の記憶が思い出されることってありますよね。そのときに、ささっと書き留めておく。「思い出せ!」と無理矢理思い出すんじゃなくて、ポロッと出てきたタイミングで拾っていく作戦です。だから、その瞬間にできる限り簡単に残せる仕組みにしました。
1日1件ずつでも積み上げていったら、10年後には何件になっていると思いますか?3,650件です。何千件もの「自分の記憶」のデータベース。毎日少しずつなら負担はほとんどないし、一旦書き込んだら「もう入れたから忘れてもいい」って安心できるじゃないですかw
残すのは、仕事のことだけじゃない
貯金する記憶は、仕事の判断だけではありません。
子どもの頃の思い出。家族との旅行。初めて仕事が決まった日のこと。恩師から言われた忘れられない一言。人生で一番悔しかった出来事。一番うれしかった出来事。好きだった音楽。好きだった景色。普段なら誰にも話さないような、何気ない思い出。
そんなものまで少しずつ残していったら、10年後、20年後、そこには仕事だけではなく「自分という人間」の記録が積み重なっています。
そして、きれいに書こうとしなくていいんです。頭に浮かんだことをXにポストする感覚で、1行だけ。矛盾していてもいいし、前に書いたことと重複していてもいい。そのまま残す。そもそも人間の記憶自体が、矛盾だらけで重複だらけですからw 整理しようとした瞬間に「ちゃんと書かなきゃ」という義務が生まれて、続かなくなる。ここでも「楽しいから続く」が鉄則です。
引き出し方は、未来のAIが考えてくれる
「貯めてどうするの?」と思うかもしれません。ここが、この計画の面白いところです。
情報さえ溜めておければ、あとは「その時に一番賢いやり方」で引き出し方を考えればいいんです。今ならRAGという仕組みかもしれませんが、10年後にはどんな技術が使えるようになっているかわからない。確かなのは、データを持っていることが活きる、ということだけ。
よくSFに出てくる人型のAIロボットに、記憶を入れたSDメモリを渡したら、私とまったく同じように話すかもしれませんしねw
そして、この貯金は誰にも真似ができません。私の記憶は、私にしか貯められないからです。何年も積み上げたデータそのものに、めちゃくちゃ価値が出るはずなんです。
少しSFみたいな、未来の話
忘れてしまった思い出を、AIが返してくれる
想像してみてください。年齢を重ねて、記憶が曖昧になったとして。
「その旅行で泊まった旅館、覚えていますか?」「この写真は、お子さんの運動会の日ですね」「この時、あなたはこんなことを話していました」。自分が忘れてしまった思い出を、AIが静かに思い出させてくれる。そんな未来があるかもしれません。
「父なら、たぶんこう言ったと思う」
さらに未来の話をするなら。何十年もかけて、自分の思考や判断、価値観、思い出を残し続けたら、いつかAIは「あなたならどう考えるか」をかなり高い精度で再現できるようになるのかもしれません。
もちろん、本当の自分ではありません。心が宿るわけでも、生き返るわけでもない。それでも「父なら、たぶんこう言ったと思う」「昔のあなたは、この場面でこんな考え方をしていました」「10年前のあなたなら、この選択をしていました」。そんなふうに、自分の思考を受け継いだ存在が生まれる未来は、決して空想だけとは言い切れないと思うんです。
10年後に遊ぶために、こっそり仕込む
真面目な話をしてきましたが、正直に言うと、私がこれを始めた一番の理由は「面白そうだから」です。
これは「自分史を残そう」というのとも、ちょっと違うんです。10年後に楽しむために、今からワクワクしながら溜めておく感覚。10年後に遊ぶために、誰にもバレないようにこっそり仕込んでいる感じ。一人でニヤニヤしながらw
脳のバックアップとも言えるし、記憶の10年貯金とも言えるし、夢のコピーロボット計画とも言える。呼び方はなんでもいいんですが、一朝一夕に実現できないことだからこそ、今から少しずつ積み上げる価値がある。未来への投資です。
ちなみにこの発想は、AIパートナーの記憶の仕組みを設計するときに、人間の脳について何度も調べたり研究したりした影響かもしれません。脳の記憶を再現しようとした話は、右腕の記事で書いたとおりです。
今日のひとつの記憶から、分身は育ち始める
コピーロボットは、ある日突然完成するものではありません。毎日の小さな記憶の積み立てが、少しずつ「もう一人の自分」を育てていく。
そして、その第一歩は意外なほど現実的です。今日感じたことを一つ残す。今日の判断を一つ残す。今日の思い出を一つ残す。たったそれだけ。その小さな記録が、10年後には何千もの記憶になり、未来の自分を助けるかもしれない。家族を助けるかもしれない。事業を助けるかもしれない。自分という人間を未来へ残す、一冊の「人生の設計図」になるのかもしれません。
あなたなら、最初にどの記憶を貯金しますか?子どもの頃のあの日のこと?それとも、今日の帰り道にふと思い出した、あの一言?
と、ここまで熱く語っておいて白状しますが、実はこの仕組み、作ったばかりで、まだ運用を始めていませんw つまり、今から始めるあなたと、ほぼ同時スタートです。10年後にニヤニヤする仲間を募集しています。「私も分身、作ってみたいんですけど」その相談から、一緒に始めましょう。


