はじめに:一人社長でも、長期休暇は取れます
一人で会社をやっていると、長期休暇は縁のない話に思えてきます。自分が止まれば仕事も止まる。クライアントに迷惑がかかる。売上も落ちる。だから、いつか余裕ができたらと考えて、そのままになっていく。
書いているのは、ソエルコト代表の小南です。2006年に会社を立ち上げ、社員2人から4人の小さな会社を5年経営したのち、一人社長になって16年になります。
起業してからの20年のあいだに、私は年末年始に3週間ハワイへ行く生活を、ほぼ毎年続けていた時期があります。2年半のあいだ、月の三分の一を山梨の山奥で過ごしてもいました。趣味の遠征のために連休を作ることもありますし、母が入院してからは、毎月まとまった日数を大阪で過ごしています。
だから先に結論を書きます。長期休暇は、うまく調整すれば作れます。取れるかどうかを決めているのは、根性でも運でもなく、いつ休むかの選び方と、休む前の準備と、周りへの伝え方です。
長期休暇の形は、思っているより幅があります。まとまった休みを取る形もありますし、暮らしのほうを変えて休みを組み込む形もあります。自分に合う形を決めて、そこに向けてお金と仕事と伝え方を整えれば、休みは現実になります。
なお、休みたいのに休めない状態そのものに悩んでいる方は、一人会社や小さな会社の社長に休みがないのは当たり前?の記事を読んでみてください。

なぜ、意識して休むのか
一人社長には、休みを決めてくれる人がいません。有給もありませんし、休むなと言われることもありません。誰にも止められないかわりに、誰にも背中を押されない。だから休みは、意識して作らないと永遠に後回しになります。
この記事を書き始めたとき、私自身「私の長期休暇っていつだっけ」と考え込んでしまいました。振り返ればちゃんと休んできたのに、思い出すのに時間がかかる。それくらい、休みは意識していないと記憶からも予定からも抜け落ちます。
気を張っている時間が長いから、離れる時間が必要になる
一人社長のしんどさは、作業量だけではありません。判断も責任も全部自分に返ってくるので、常に気を張った状態が続きます。パソコンを閉じても頭は動いていて、休んでいるつもりの時間まで仕事が入り込んできます。
私にとって、それを断ち切れるのが趣味の時間です。大学生の頃から推し活を続けていて、ライブハウスで大きな声を出したり、仲間と盛り上がっているときは、仕事のことを100%忘れています。この時間を持てているかどうかで、心身の元気がはっきり変わります。
もうひとつ、疲れが溜まってきたなと感じたら、「露天風呂で仕事の日」を作っています。お風呂に浸かって、上がったら少し仕事をして、また浸かる。完全な休みではありませんが、それでも十分にリフレッシュできますし、凝り固まっていた考えがほぐれて新しいアイデアが出てきます。
つまり、休みは気力を回復させるためだけのものではありません。判断の質や発想にも直接効いてきます。休むことは、仕事のうちだと考えていいと思います。
休みの準備をすると、仕事の中身が見えてくる
はっきり書いておくと、一人社長が3週間仕事を離れたら、仕事はほぼ止まります。これは事業が弱いからではありません。社長が離れても何ひとつ変わらないなら、その社長はいなくてもいいということになってしまいます。
やることは、止めていい部分と、止めてはいけない部分を切り分けることです。制作や相談のように、待ってもらえる仕事は止められます。一方で、ネット通販のように注文が入り続けるものは止められません。止められない部分が残るなら、そこは誰かにお願いするか、人手がいらない形にしておく必要があります。
この切り分けをすると、自分の仕事が自然に分かれていきます。止めても平気なもの、先に終わらせておけるもの、誰かに渡すもの、自分が少し見ておけば済むもの。ふだんは全部まとめて「忙しい」で片づけている中身が、休む予定を先に置くことで初めて仕分けされます。この棚卸しは、平常時にはなかなかできません。
私の場合、長期休暇はこんな形だった
長期休暇と聞くと、完全に仕事を止めて海外で過ごす姿を思い浮かべる方が多いと思います。もちろんそれも長期休暇ですが、それだけではありません。ここからは少し例外的な話も含めて、私自身がやってきた形をそのまま書きます。
1. 年末年始に3週間:まとまった休みを作る
私が一番長く続けてきたのが、この形です。社員がいた頃から一人社長になってからも、ほぼ毎年、年末年始に3週間ハワイへ行っていました。
出発は12月20日、帰国は1月10日。世の中より少し早く休みに入って、少し遅めまで休む。この日程には、はっきりした理由があります。
- 仕事への影響がほとんどない
出発の頃はクライアント側も休みに入る準備をしていて、年末年始はしっかり休んでいる。戻る頃は仕事が始まったばかりで、まだ大きく動き出していない。だから動いている仕事が少なく、調整もしやすい - 告知が軽くて済む
もともと世の中が止まる時期と重なるので、少し周りに伝えておくだけで、しっかり休める - 旅費が安い
ピークを外しているので、フライトの値段がかなり違ってくる
年末年始に行けない年は、ゴールデンウィークを挟んで2週間にしていました。発想は同じで、世の中の休みに自分の休みを少し足すという考え方です。
この3週間は、単なる旅行ではありませんでした。1年間お疲れさまという区切りで、また今年も頑張るぞというスタートでもあって、これを楽しみに1年働けるところがありました。ストレスは完全にリセットされて、体も休まって、丸一日家族と過ごせる日が3週間続く。振り返っても、あの時間があってよかったと思います。
正直に書くと、一回行けば150万円ほどかかりました。お金に余裕がある時期でなければ難しいですし、子どもが学校を休む日数も増えていくので、7歳を過ぎたあたりからは行きづらくなりました。
ただ、いつでもいいからまとまった休みを取りたいと考えている方には、この年末年始の3週間という形をいちばんおすすめします。仕事への影響が少なく、費用も抑えられて、休みの密度が高いからです。
2. 拠点を増やす:暮らしの中に休みを組み込む
まとまった休みとは別に、暮らしのほうを変えてしまう形もあります。
私は2025年11月まで、2年半のあいだ二拠点生活をしていました。山梨県の身延町で築200年を超える古民家を借りて、200平米ほどの畑を無農薬・無肥料の自然栽培でやっていました。目指していたのは自給自足です。
過ごし方は、早朝5時頃から午前中は畑に出て、午後は普通に仕事をする。仕事の合間に畑に戻ることもありました。山奥ですが光回線を引けたので通信環境の不安はなく、打ち合わせは基本Zoomなので支障もありませんでした。
これは休暇と呼びにくいかもしれません。仕事はしていましたし、畑仕事は普通に労働です。それでも、生活の中に仕事以外の時間が構造として組み込まれているので、意識して休みを作らなくても休みに近い時間が生まれていました。
3. 用事に合わせて連休を作る:出張と組み合わせる
趣味の遠征のために連休を作ることもあります。私の場合は推し活で、地方に行く機会が多いので、その前後を空けておく形です。
地方のクライアントも多いので、「夏に近くまで行くので、よかったらその時に対面で打ち合わせしませんか」と自然に話しています。普段はZoomなので、たまに顔を合わせられるのはお互いに悪くありません。ライブハウスの近くまで打ち合わせに来てくれた方もいました。
4. 休みたいわけではないけれど、時間が必要なとき
去年の年末、大阪の母が急に倒れて入院しました。それから月2回ほど東京と大阪を往復する生活が続き、今は短期入所の施設に入ったので月1回ほどのペースになっています。
これは、休みたくて取る休みとは種類が違います。ただ、まとまった日数を空けられるように、仕事の予定をずらしたり減らしたりしている点では、長期休暇の準備とまったく同じことをしています。
朝は7時頃から仕事をして、昼前から夕方までは母の面会に行き、夜から深夜にまた仕事に戻る。日中に打ち合わせを入れられないので、午前か夜に調整してもらう。それで大きな問題は起きていません。
休みたいときに休める状態を作っておくことは、遊びのためだけではありません。こういうときに動けるかどうかにも直結します。この考え方は一人会社や小さな会社の社長に休みがないのは当たり前?にも書きました。

長期休暇を取るために整えること
取りたい形が決まったら、整えるものは3つです。お金、仕事、そして伝え方です。
1. お金:余裕があるときに、先に予定を入れる
当たり前のことですが、休むと収入は減ります。一方で、旅に出れば支出は増えます。長期休暇のいちばん現実的な壁は、お金です。
私のハワイは、一回行くと150万円ほどかかりました。家族で3週間なので、それくらいはかかります。行けていたのは、お金に余裕がある時期だったからです。余裕がないときは無理です。ただ、当時の私には、休んでもほぼ何もしなくても毎月40万円入ってくる仕組みがありました。動いていないあいだも、最低限の土台があるかどうかで、休める安心感はまったく変わります。
推し活の連休や、母の面会のために日数を空けるような休みなら、旅費の壁は小さくなります。休みの規模は、そのときの事業の状態と切り離せません。ただ、順番は逆で、余ったら休みに使うのではなく、休みを先に決めてしまいます。私は行きたい予定や空けたい日を、先にGoogleカレンダーへ全部入れています。休みが先に入っていれば、仕事の予定はその日を避けて決まります。後から空いた日を探しても、たいてい何かで埋まってしまいます。
2. 仕事:自分がいない期間を、前提に組み替える
次に、仕事のほうを組み替えます。休む前にやることを、私は4つに分けて考えています。
- 前倒しにするもの
出発前に納品できるものは、先に終わらせる。休み前は非常に忙しくなるので、そこは仕方ないと割り切る - 止めておくもの
この期間は動かないと先に伝えておけば、止まっていても問題になりません。問題になるのは、動くと思われていて止まっているときです - 任せるもの
留守のあいだに誰かが判断して動く必要がある部分は、信頼できる人にお願いするしかありません - 自分で少しだけ見るもの
すべて手放さなくてもいい。ここが現実的なところです
私はハワイに行くときも、仕事ができるパソコンを持っていって、連絡がつく状態にしていました。実際、毎回多少の緊急対応や作業は発生しました。それでも困らなかったのは時差のおかげです。1日遊んで部屋に戻った夜が、日本ではまだ午後です。夜のうちに対応すれば、翌日の予定に影響しませんでした。
完全に離れるのが理想だとは思いますが、それを条件にすると休みは永遠に取れません。少し持っていく前提で組んだほうが、はるかに現実的です。
留守を任せられる相手を持つ話は一人会社・小さな会社の社長の右腕は社外にいる!にまとめました。

ふだんの作業を減らして休みを作りやすくする方法は一人会社の時代が来た。AI社員の時代が来た。と一人社長のAI活用術に書いています。

3. 伝え方:隠すより、そのまま話したほうがうまくいく
最後が、クライアントへの伝え方です。ここでいちばん伝えたいのは、休みの告知は謝るための連絡ではないということです。
私は年末年始に3週間いなくなることを、毎年そのまま伝えていました。反応は、迷惑がられるというより「そういう働き方ができるのはすごいね」「大胆な休み方だね」と面白がってもらえるものでした。二拠点生活のときも同じで、「今日はどっちにいるの?」とよく聞かれて、「今日は山奥です」と答えていました。私の考え方やスタイルが伝わったことで、むしろ良い影響しかありませんでした。
社長は、面白がってもらえたほうが得だと思っています。この人はこういう人だとわかってもらえると、付き合いが続きますし、価値観も共有できて、仕事もやりやすくなります。休み方も含めて、その人らしさです。
母のことも、クライアントには全部伝えています。大変だねと言ってもらえて、打ち合わせの時間だけでなく仕事のスケジュールまで調整してもらっています。ここまで協力してもらえるのは、休みのときだけ上手に伝えているからではなくて、普段からなんでも話せる関係にしているからだと思います。
そのうえで、実務としての告知は早めが楽です。伝える内容は、期間と、休み前に終わらせる仕事と、休み中の連絡の扱いの3つで足ります。
いちばん効くのは、連絡の扱いです。連絡がつかないとクライアントは不安になります。いつでも連絡が取れること、何かあれば緊急対応もできることを先に伝えておくと、安心してもらえます。
一人でやっていると、代わりに対応してくれる人がいない場合もあります。その場合は、無理に代役を立てるのではなく、休暇中でも自分で対応します。急ぎの連絡が来たら自分が動く。その覚悟を持って、いつでも対応できる状態にしておくことです。
戻ってきた日を、埋めておかない
見落としやすいのが、帰ってきた直後です。長い休みのあいだには、必ず何かしら連絡が来ます。急ぎのものは休暇中に対応しますが、それで全部片づくわけではありません。「戻ってからで大丈夫ですよ」と待ってもらった仕事が、帰国日には溜まっています。
だから復帰直後は、最初から予定を詰めないほうがいいです。戻った初日は、休みのあいだに溜まったものを片づける日として空けておくくらいでちょうどいいと思います。
どんな休み方を選ぶか
休み方には幅があります。どれが正しいということはなく、自分の性格と事業の状態で選べばいいと思います。
- 完全に仕事から離れる
リセットの効果はいちばん大きい。ただし準備も一番必要になる - 連絡だけ取れるようにしておく
私が長く続けてきた形。時差がある場所なら、遊ぶ時間と対応の時間が自然に分かれる - 働く場所を変える
休みではないけれど、暮らしが変わると気持ちが切り替わる。二拠点はこれに近い - 短く、こまめに離れる
露天風呂で仕事の日のように、完全なオフでなくても回復する形はあります
空白の時間が苦手な方もいます。私も予定が埋まっていないと落ち着かないほうです。それでも休み方は選べます。目的は、何もしない時間を作ることではありません。仕事のことを忘れられる時間、そして一歩引いて自分の事業を俯瞰して見る時間を持つことです。
まとめ:やり方次第で、休みは作れる
長期休暇は、余裕のある人だけのものではありません。うまく調整すれば作れます。
- 世の中が止まる時期に自分の休みを足すと、影響も費用も小さくできる
- 休んでいる間の分を、先に数字にしておく
- 前倒し、止める、任せる、少しだけ見る、で仕事を組み替える
- 期間と連絡の扱いを早めに伝える。隠さずに話したほうが協力してもらえる
- 完全に離れなくてもいい。自分に合う形を選ぶ
そして、休みの形はひとつではありません。3週間まとめて取るのもいいですし、暮らしの中に休みを組み込むのもいい。用事のために連休を作るのも、疲れたときに半分休むような日を作るのも、立派な休み方です。
もしまとまった休みを取りたいなら、行きたい場所に行けばいいと思います。私にとってのハワイの3週間は、1年の区切りであり、次の1年の始まりでもありました。あの時間があるから頑張れたところがあります。
ストレスを発散する時間も、体をリフレッシュする時間も、やり方次第で作れます。この記事に書いた形のどれかを、参考にしてもらえたら嬉しいです。
休みを作れる状態から、一緒に考えませんか
長期休暇を取りたいと思っても、何から手をつければいいかは分かりにくいものです。お金なのか、仕事の組み立てなのか、断れない関係のほうなのか。それとも、任せられる人も相談できる相手もいないことなのか。詰まっている場所は人によって違いますし、自分の事業のことは自分ほど客観的に見られません。
頭の中がまとまっていなくても大丈夫です。何を相談したらいいか分からなくても大丈夫です。
ソエルコトの課題発見セッションは、私が答えを出す時間ではありません。一緒に話をしながら、今どんな状態なのか、何が本当の課題なのか、次に何をすればいいのか。それを整理していく時間です。
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