はじめに
一人で会社を作ろうと決めたとき、最初にぶつかるのが「株式会社と合同会社、どっちにするか」「手続きはどう進めるのか」「全部でいくらかかるのか」という3つの疑問です。
この記事では、この3つに正面から答えます。株式会社と合同会社の違いを根っこから整理し、一人で設立するための手順をステップごとに解説し、かかる費用を具体的な金額で比較します。
書いているのは、ソエルコト代表の小南です。2006年に会社を立ち上げ、社員2人から4人の小さな会社を5年経営したのち、一人社長になって16年になります。
私自身、2006年に合同会社を自分で設立し、2年後に株式会社へ組織変更しました。両方の設立を自分の手で経験しています。その実感も含めてお伝えするので、これから会社を作る方の判断材料にしてもらえたらと思います。
株式会社と合同会社の比較
会社を作ると決めたら、まず選ぶのが「株式会社」か「合同会社」かです。
どちらも法人格としての効力は同じで、有限責任(万が一のとき、出資した額までしか責任を負わない)である点も共通しています。法人税率、消費税、社会保険の扱いも同じです。では何が違うのか。根っこにあるのは、たった一つの設計思想の違いです。
所有と経営が「分かれるか、一致するか」
株式会社は、会社の持ち主(株主)と会社を動かす人(取締役)を分けられる仕組みです。経営に関わらない投資家からもお金を集められるのは、この「所有と経営の分離」があるからです。一人で作る場合は株主も取締役も自分ですが、制度の土台にはこの分離の考え方が流れています。
合同会社は、お金を出した人がそのまま経営も行います。「所有と経営の一致」が原則で、株主総会もありません。出資者同士の合意だけで物事を決められるので、意思決定が速く、運営の自由度が高いのが特徴です。
この設計思想の違いが、信用度、費用、資金調達、意思決定のスピード、利益の分け方、維持コストなど、あらゆる面に影響しています。
比較表
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 | 分かりやすく言うと… |
|---|---|---|---|
| 社会的信用度 | 高い | 低い | 株式会社はルールが厳しく情報公開も義務なので「ちゃんとしてそう」と思われやすいです。 |
| 設立費用 | 約20万円~ | 約6万円~ | 株式会社は「定款認証」という手続きが必要で、税金(登録免許税)も高めです。 |
| 維持費用 | 7万円~ | 7万円~ | 株式会社でも合同会社でも、法人住民税の均等割で最低7万円かかります。 |
| 資金調達 | いろいろ(IPO、VC、増資など) | 限られる(融資、仲間からの追加出資など) | 株式会社は「株」を発行して広くお金を集められますが、合同会社にはその手が使えません。 |
| 意思決定 | 株主総会での決議が必要 | 経営メンバーの合意だけでOK | 所有と経営が分かれているかどうかが直結。合同会社はとにかくスピーディーに物事を決められます。 |
| 利益の分け方 | 出資した割合に応じて公平に | ルールブック(定款)で自由に決められる | 株式会社は投資額に応じて、合同会社は頑張りや貢献度に応じて利益を分けられます。 |
| 役員の任期 | 原則2年(最長10年まで伸ばせる) | なし(無期限) | 株式会社は定期的に株主から信任を得る必要がありますが、合同会社にはその縛りがありません。 |
いくつか補足します。
設立費用の差は、主に定款認証の有無と登録免許税の最低額から生まれます。株式会社は電子定款でも約17万〜20万円前後、合同会社は約6万円〜が目安です。
維持費用は、法人住民税の均等割(赤字でも年間約7万円)がどちらにもかかります。株式会社にはこれに加えて、毎年の決算公告の義務があります。官報に掲載する場合は約7.5万円ほどのコストです。ただし実態としては、東京商工リサーチの調査によると、官報で決算公告を行っている株式会社はわずか約1.8%。ほとんどの中小企業が実施していないのが現実です。会社法で義務付けられていて、怠ると100万円以下の過料(行政罰)の規定はあるのですが、実際に罰則が適用されることはほぼありません。合同会社には決算公告の義務自体がないので、この点は気にしなくて済みます。
役員の任期も意外と効いてきます。株式会社の取締役には任期があり(原則2年、最長10年に延長可能)、任期が来るたびに重任の登記が必要です。登記には登録免許税1万円がかかります。多くの一人社長は任期を10年に延長して手間を減らしていますが、それでも10年に1度は重任登記をしなければなりません。一人社長だと「自分が自分を再任するのに登記が要る」という感覚がなく、忘れてしまう人がかなり多いようで、法務省も公式に注意喚起しています。放置すると代表者個人に過料(実務上は数万円程度)が科されますし、最後の登記から12年経つと「みなし解散」として法務局に職権で解散登記されるリスクもあります。合同会社には役員の任期自体がないので、この手間もリスクもありません。
いま、合同会社はどれくらい受け入れられているか
私が合同会社を設立した2006年当時、合同会社は日本にできたばかりでした。制度としての面白さや可能性を感じて迷いなく選んだのですが、一般的な認知はほぼゼロ。行く先々で「何それ?」「そんな会社の種類があるんだ?」と聞かれました。
信用や信頼のために会社を作っているのに、「よくわからない組織」「変わり者」という印象を与えてしまう。良いイメージを持ってもらえることは、まずありませんでした。
あれから約20年。状況はかなり変わっています。
東京商工リサーチの調査によると、2025年に新たに設立された法人のうち、合同会社は約4万5,000社で、全体の約3割を占めています。2012年には約1万社だったので、十数年で4倍以上に増えました。一方、株式会社の新設は2年連続で前年を下回っており、新設法人の増加を牽引しているのは合同会社です。
法人番号データの分析でも、従業員数がわかる合同会社のうち約98%が10名以下というデータがあります。つまり合同会社は、一人会社や小さな会社の入口として選ばれている形態です。
個人事業主からの法人成り、フリーランスの法人化、スキルを武器にした一人起業。こうした場面では、合同会社の形態だけで不利になることは少なくなっています。お客さんが一般消費者であるBtoCのビジネスでは、会社の種類を気にする人はほとんどいません。
それでも、株式会社の方が断然安心
ただし、はっきり言っておきたいことがあります。迷っているなら、株式会社にしておいた方がいいです。
合同会社の普及率が上がっても、世の中の感覚は「会社といえば株式会社」です。この空気は2026年の現在も変わっていません。
取引先に名刺を出したとき。銀行に口座を開きに行ったとき。人を採用するとき。「株式会社」と書いてあるだけで、余計な説明が要りません。合同会社だと「代表社員って何?」「社員なのに代表?」と聞かれることがまだあります。
私自身、合同会社を2年間経営して、この「余計なところで説明が必要になる」ストレスが積み重なり、社員を増やして新体制になるタイミングで株式会社に変えました。お金も手間もかかりましたが、変えたくて仕方なかった、というのが正直な気持ちです。変えた後は余計なマイナスイメージがなくなって安心しました。
合同会社のコストの安さや自由度は確かに魅力です。でも、信用で得られる安心は、コストの差では測れません。外に向けて安心を持ちたいなら株式会社。コストと自由度を優先するなら合同会社。ここは損得ではなく、自分がどちらの安心を取るかで決めてください。
ビジネスタイプ別の選び方
将来、外部資金の調達や上場を考えるなら → 株式会社
株式を発行できない合同会社では、ベンチャーキャピタルからの出資やIPOは不可能です。成長戦略に外部資金が含まれるなら、最初から株式会社を選んでおくのが確実です。後から合同会社を株式会社に変えることはできますが、手続きに時間と費用がかかります。
スモールビジネスやBtoC事業を着実に育てるなら → 合同会社でも可、迷うなら株式会社
設立費用を抑えたい、株主総会の手間なく経営判断を速くしたい、という場合は合同会社にメリットがあります。お客さんが一般消費者であれば、会社の形態を細かく気にされることはほとんどありません。ただ、前述のとおり迷うくらいなら株式会社にしておくのが無難です。
フリーランスからの法人成りなら → 合同会社でも可
法人化の目的が節税(役員報酬による給与所得控除)、社会保険加入、有限責任の確保なら、合同会社でも十分にそのメリットを得られます。信用の源泉はあなた自身のスキルと実績なので、形態で判断されることは少ないでしょう。
一人で会社を設立する手順
会社の種類を決めたら、いよいよ設立の手続きに入ります。やることは大きく3つのフェーズに分かれます。
フェーズ1:準備
登記申請の前に、会社の土台を固めます。
ステップ1:基本事項を決める
以下の項目を決めていきます。これらは定款(会社のルールブック)に記載する情報になります。
商号(会社名)
会社の正式名称です。「株式会社」または「合同会社」を商号の前か後ろに入れる必要があります。同一の住所に同じ商号の会社がないか、事前に法務局のオンラインサービスで確認しておきましょう。ドメイン(ホームページのアドレス)やSNSアカウントが取得できるかも併せてチェックしておくと安心です。会社名の決め方について詳しくは会社名の決め方の記事で解説しています。

本店所在地
会社の公式な住所です。自宅でも構いませんが、賃貸の場合は契約で事業利用が禁止されていないか確認が必要です。バーチャルオフィスを使う選択肢もありますが、法人口座の開設時に審査が慎重になる傾向があるので注意してください(ステップ8で触れます)。
事業目的
会社が何をしてお金を稼ぐかを具体的に書きます。いま行う事業だけでなく、将来やりたいことも含めて5〜10個ほど書いておくのが一般的です。最後に「前各号に付帯または関連する一切の事業」と加えておくと、多少の事業拡大には対応できます。
広すぎると「結局何をする会社?」と不信感を持たれますし、狭すぎると新しいことを始めるたびに定款変更(数万円の費用と手間)が必要になります。
資本金
事業の元手となるお金です。法律上は1円でも設立できますが、実際に1円では銀行口座の開設すら断られる可能性があります。目安は「最初に必要な経費+3〜6ヶ月分の運転資金」で、少なくとも数十万円〜100万円程度は用意しておきたいところです。ただし1,000万円以上にすると、設立初年度から消費税の課税事業者になるため、特別な理由がなければ1,000万円未満に抑えるのが得策です。
事業年度
決算をいつまとめるかを決めます。自由に設定できますが、ビジネスの繁忙期を避けるのが一般的です。決算日から2ヶ月以内に確定申告と納税が必要なので、その時期が忙しくない月を選びましょう。
発起人
会社の設立を企画し、出資する人です。一人会社なら自分自身です。
ステップ2:会社の印鑑を作る
会社として活動するための印鑑を準備します。最低限、この3つを揃えておきましょう。
- 代表者印(実印):法務局に届け出る、会社で最も重要な印鑑です。サイズは「1辺が1cmより大きく、3cmの正方形に収まること」と決められています。
- 銀行印:法人口座の開設や取引に使います。代表者印と兼用もできますが、紛失時のリスクを考えると別々に作るのが安心です。
- 角印:請求書や見積書など日常の書類に押す、会社の認印です。
ネット通販で「法人印鑑3点セット」として注文できます。住所・会社名・代表者名が入ったゴム印も一緒に頼んでおくと、書類作成が楽になります。
ステップ3:定款を作成する
定款(ていかん)は、会社の組織や運営のルールを定めた書類です。
定款には「絶対的記載事項」と呼ばれる、書かないと無効になる項目があります。商号、事業目的、本店所在地、出資される財産の価額(資本金の額)、発起人の氏名と住所がこれにあたります。
法務局のウェブサイトにテンプレートが用意されているので、それをダウンロードして自分の会社の情報に書き換えていくのが確実です。
ステップ4:定款の認証を受ける(株式会社のみ)
このステップは株式会社だけに必要な手続きです。合同会社は定款の認証が不要なので、ここを飛ばしてステップ5へ進めます。
作成した定款が法律的に問題ないことを、公証人という法律の専門家に証明してもらいます。手続きは、会社の本店所在地と同じ都道府県内にある公証役場で行います。
事前に公証役場へ連絡して定款案を送り、内容をチェックしてもらってから予約を取るのが一般的な流れです。当日は、定款、印鑑登録証明書(発行3ヶ月以内)、実印などを持参します。
認証手数料は資本金の額によって変わります(2024年12月改定)。
- 資本金100万円未満:3万円(一人設立・取締役会なし等の条件を満たすと1万5,000円)
- 100万円以上300万円未満:4万円
- 300万円以上:5万円
一人で株式会社を作る場合は、条件を満たして1万5,000円で済むケースも多いです。このほか、謄本の発行手数料が数千円かかります。
ステップ5:資本金を振り込む
定款の準備ができたら(株式会社は認証が終わってから)、資本金を振り込みます。
この時点では会社の銀行口座がまだないので、発起人個人の銀行口座に、自分の名前で振り込みます。通帳に「誰が」「いくら」振り込んだかの記録を残すのが目的です。
振り込みが終わったら「払込証明書」を作ります。通帳の表紙、口座名義人がわかるページ、振り込み記録があるページの3つをコピーし、証明書と一緒にホチキスで留めます。
フェーズ2:法務局へ設立登記
準備が整ったら、法務局に会社の設立を届け出ます。
ステップ6:書類を揃えて登記申請
登記申請は、会社の情報を法務局のデータベースに登録してもらう手続きです。
提出期限は、資本金の払い込みから2週間以内です。
法務局に申請書を提出した日が、会社の設立日(誕生日)になります。 法務局は土日祝と年末年始は休みなので、これらの日は設立日にできません。
提出方法は3つあります。
- 窓口で直接提出:書類に不備があればその場で教えてもらえるのがメリットです。
- 郵送:簡易書留など、届いたことが確認できる方法で送ります。
- オンライン申請:マイナンバーカードがあれば、オンラインで提出できます。
株式会社の場合の主な必要書類は、登記申請書、登録免許税の収入印紙を貼る台紙、認証済みの定款、払込証明書、役員の就任承諾書、印鑑届出書などです。合同会社も似ていますが、定款認証が不要な分、書類は少しシンプルになります。
設立支援サービスを使うと、もっとシンプルに
いまは「freee会社設立」「マネーフォワード クラウド会社設立」「弥生のかんたん会社設立」など、民間のオンラインサービスが充実しています。
画面の案内に沿って必要事項を入力していくと、定款をはじめとする書類一式が自動で作成されます。電子定款にも対応しており、紙定款で必要な収入印紙代4万円を節約できます。
freee会社設立の場合、書類作成は無料で使えます。電子定款の作成代行には手数料がかかりますが、同社の会計ソフトとの年間契約で無料になるキャンペーンもあります(条件は変わることがあるので、利用時に確認してください)。
また、マイナポータルの「法人設立ワンストップサービス」と連携して、登記申請から設立後の届出までオンラインで完結できるサービスもあります。
専門知識がなくても一人で進められるので、自分で設立するなら、こうしたサービスを使わない手はありません。
フェーズ3:設立後の手続き
登記が完了して会社が生まれたら、やるべきことがまだ残っています。
ステップ7:各役所への届出
登記が終わったら、なるべく早く以下の届出を済ませます。提出期限が短いものもあるので、一気に片付けましょう。
- 税務署:法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書などを提出します。
- 都道府県税事務所・市町村役場:地方税のための法人設立届出書を提出します。
- 年金事務所:健康保険・厚生年金保険の新規適用届を提出します。一人社長であっても社会保険への加入は義務です。
- 労働基準監督署・ハローワーク:従業員を雇う場合に、労働保険や雇用保険の手続きが必要です。
ステップ8:法人口座の開設
会社のお金を管理するための法人口座を開設します。
近年、マネーロンダリング対策の強化により、法人口座の開設審査は厳しくなっています。特にバーチャルオフィスを本店所在地にしている場合や、資本金が極端に少ない場合は、審査に時間がかかったり、断られたりすることがあります。
審査をスムーズに進めるために、事業内容が具体的にわかる事業計画書と、会社の公式ウェブサイトを用意しておくのが有効です。
ネット銀行(ドコモSMTBネット銀行(旧 住信SBIネット銀行)、GMOあおぞらネット銀行、PayPay銀行など)は、新しい会社にも比較的開設しやすい傾向があります。メガバンクでの開設が難しい場合は、まずネット銀行から始めるのも一つの方法です。
設立費用の全貌
会社設立にいくらかかるのか。費用は、会社の種類(株式会社か合同会社か)と、設立の方法(自分でやるか、専門家に頼むか)で大きく変わります。
費用の比較
| 費用項目 | 株式会社 自分で紙定款 | 株式会社 自分で電子定款 | 株式会社 専門家依頼 | 合同会社 自分で紙定款 | 同会社 自分で電子定款 | 合同会社 専門家依頼 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 定款用収入印紙 | 40,000円 | 0円 | 0円 | 40,000円 | 0円 | 0円 |
| 定款認証手数料 | 15,000~50,000円 | 15,000~50,000円 | 15,000~50,000円 | 0円 | 0円 | 0円 |
| 登録免許税 | 150,000円 | 150,000円 | 150,000円 | 60,000円 | 60,000円 | 60,000円 |
| 専門家報酬/サービス料 | 0円 | 約0~5,000円 | 50,000~100,000円 | 0円 | 約0~5,000円 | 30,000~90,000円 |
| その他諸費用 | 約10,000円 | 約10,000円 | 約10,000円 | 約10,000円 | 約10,000円 | 約10,000円 |
| 総費用 (目安) | 約215,000円〜 | 約175,000円〜 | 約225,000円~ | 約110,000円〜 | 約70,000円〜 | 約100,000円~ |
最大の差は定款認証の有無と登録免許税の最低額です。
株式会社は、電子定款を使って自分で手続きしても、法定費用だけで約17万〜20万円前後かかります。合同会社は定款認証が不要なので、電子定款なら約6万円〜で済みます。その差は約10万円以上です。
紙の定款で手続きすると、どちらも収入印紙代4万円が加算されます。
費用を下げる3つの方法
1. 電子定款を使う
紙の定款に必要な収入印紙代4万円が不要になります。これが最も確実な節約です。前述の設立支援サービス(freee、マネーフォワード、弥生など)を使えば、個人で電子定款の環境を整える必要もありません。
2. 設立支援サービスを使う
書類作成は無料、電子定款の代行も数千円程度で済むサービスが揃っています。会計ソフトとの年間契約でさらに費用が下がることもあります。
3. 特定創業支援等事業を利用する
自治体が実施する「特定創業支援等事業」の支援を受けると、登録免許税が半額になる制度があります。株式会社なら最低15万円が7万5,000円に、合同会社なら最低6万円が3万円になります。利用できるかは市区町村によって異なるので、お住まいの自治体に確認してみてください。
専門家に頼む選択肢
司法書士や行政書士に依頼すると、報酬として5万円〜10万円ほどの費用が上乗せされます。
ただ、専門家が提供するのは「書類作成の代行」だけではありません。事業目的の書き方、資本金の額、将来の事業展開を見据えた定款の設計など、設立支援サービスでは得られない戦略的なアドバイスが含まれます。
手続きに不安がある方、ビジネスの構造が複雑な方、手続きにかける時間を本業に回したい方は、専門家への依頼を検討してよいでしょう。
自分でやってみた感触(経験談)
私が2006年に合同会社を設立し、2008年に株式会社へ組織変更したときは、どちらも自分で手続きしました。当時はAIも設立支援サービスもなかったので、テンプレートを紙に出力して、わからないところは法務局に何度か聞きに行きながら、教えてもらいながら進めました。
合同会社の設立は比較的すんなりできました。株式会社の方は書類が少し複雑で、法務局で赤ペンの修正を入れられたこともあります。組織変更は、実質的に設立手続きを2回やるようなもので、手間もお金もかかりました。
ただ、設立手続き自体は基本的にテンプレート作業です。いまなら設立支援サービスを使えば、画面に沿って入力するだけで書類が出来上がります。自分でできそうなら、自分でやってみることをおすすめします。一生に一度かもしれない経験ですし、会社を自分の手で作った実感が持てます。
つまずきやすいポイント
設立手続きそのものは、手順どおりに進めれば完了します。ただ、「法律上はOKでも、後で困る」ポイントがいくつかあります。事前に知っておくだけで避けられるものばかりです。
資本金1円の落とし穴
2006年の法改正で、資本金1円でも会社を作れるようになりました。しかし、実際に資本金1円で設立すると厳しい現実が待っています。
- 銀行口座の開設を断られる可能性が高いです。マネーロンダリング対策の強化により、資本金が極端に少ない会社は「実態があるのか」と疑われやすくなっています。
- 取引先からの信用が得にくくなります。資本金は登記事項なので、誰でも確認できます。
- 融資を受けるのも難しくなります。
資本金は「最初に必要な経費+3〜6ヶ月分の運転資金」を目安に。少なくとも数十万円〜100万円程度あれば、社会的な信用度が上がり、口座開設もスムーズになります。資本金について詳しくは資本金の記事で解説しています。

事業目的は広すぎず、狭すぎず
定款に書く事業目的は、具体性と柔軟性のバランスが大切です。
- 狭すぎると、新しい事業を始めるたびに定款変更が必要になります(費用と手間がかかります)。
- 広すぎると、「この会社は何をしているのかわからない」と思われ、信用に影響します。
いまやっていることと、将来やりたいことを合わせて5〜10個程度を具体的に書き、最後に「前各号に付帯または関連する一切の事業」を加えておくのが定番です。
会社名は事前チェックを忘れずに
商号を決めたら、登記申請の前に必ず以下を確認してください。
- 同一住所に同一商号がないか:法務局のオンラインサービスで調べられます。
- 有名企業の商号と紛らわしくないか:不正競争防止法に抵触する恐れがあります。
- 会社名で検索したとき、自社が1位に来るか:同じ名前の会社がたくさんあると、検索しても自社が見つかりません。いまの時代、「社名で検索→公式サイトが出てくる」は当たり前の導線です。検索で埋もれる会社名は、それだけで機会損失になります。
- ドメインやSNSアカウントが取れるか:Webでのブランディングに直結します。
会社名を後から変えるのは、登記変更の費用も手間もかかるので、ここは慎重に。
設立日は「登記申請日」になる
法務局に申請書を提出した日が、そのまま会社の設立日です。登記手続きが完了した日ではないので注意してください。記念日や縁起のよい日を設立日にしたい場合は、その日に合わせて申請する段取りが必要です。
なお、法務局は土日祝と年末年始が休みなので、これらの日は設立日にできません。
決算月は、ビジネスの繁忙期を避けて設定するのが基本です。設立日から最初の決算日までの期間が長くなるように設定すると、事業を軌道に乗せる時間を確保しやすくなります。
まとめ
一人で会社を作るために押さえておくべきことを整理します。
株式会社と合同会社の選択では、コストと自由度なら合同会社、信用と安心なら株式会社です。合同会社はいま新設の約3割を占めるほど普及しましたが、「会社=株式会社」という感覚はまだ根強くあります。迷うなら、株式会社にしておくのが安心です。
設立手順は、基本事項を決め、印鑑を作り、定款を作成し(株式会社は認証も)、資本金を振り込み、法務局に登記申請する流れです。設立後の届出と法人口座の開設まで含めると、やることは多いですが、設立支援サービスを使えば一つずつ迷わず進められます。
費用は、株式会社が電子定款で約17万〜20万円前後、合同会社が約6万円〜。設立支援サービスの利用や、自治体の支援制度で下げられる場合もあります。
会社の設立は、ゴールではなく始まりです。書類を出して登記が完了した先に、本当に大切なこと——事業をどう育てていくか——が待っています。
設立の先にある「一人で抱えなくていい」という選択肢
一人で会社を作ろうとしている方のなかには、設立手続きだけでなく、事業の方向性や集客の進め方、何から手をつけるべきかといった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
ソエルコトでは、一人社長のための「課題発見セッション」を行っています。
いまの状況を話していただくなかで、ご自身でも気づいていなかった課題や、本当に必要な一手が見えてくることがあります。こちらから答えを押し付けることはしません。一緒に整理して、あなた自身の答えに気づくための時間です。
無料相談会ではありません。無理な勧誘も一切しません。「一人で抱えている」と感じたら、一度話してみてください。

