一人社長が会社員に戻る(転職する)ということの本当の意味

一人社長ブログ
この記事の監修者・著者

2006年に合同会社を設立。2008年に株式会社へ組織変更。社員2人〜4人の小さな会社を5年経営後、一人会社・一人社長となり15年。

WebとAIを活用して様々なスモールビジネスを展開中。集客の仕組み化が得意。一人会社・小さな会社の社長さんの支援実績も豊富で、日本全国にクライアントがいます。

小南邦雄(一人社長・一人会社研究家)をフォローする
  1. はじめに:会社員時代の安定が魅力的に見えるとき
  2. 転職市場の厳しい現実:経営経験はプラス?それともマイナス?
    1. 1.内定率14.4%という数字に隠されたワナ
    2. 2.採用担当者はこう見ている:「プライドが高い」「扱いにくい」、そして「また辞めるかも」
    3. 3.「なぜ会社を辞めたのか」:あなたの語るストーリーが重要になる
    4. 4.求められる役割とのズレ:専門家か、何でも屋か
  3. 会社員に戻ることで失うもの:精神的なコストを考える
    1. 1.日常生活の変化:自分で決める生活から、ルールに従う生活へ
    2. 2.仕事の目的の変化:「自分の使命」から「与えられたタスク」へ
    3. 3.社会的な評価の変化と「失敗」のイメージ
    4. 4.新しい人間関係:「元社長」という特別な存在
  4. 想像以上に大変な会社清算の手続き
    1. 1.会社を「たたむ」ための法律上のルール
    2. 2.会社をたたむためにかかる費用
    3. 3.数ヶ月以上かかる手続きの時間
    4. 4.自分の夢を自分の手で終わらせる痛み
  5. まだ諦めないで!前を向くための選択肢
    1. 1.あなたの事業の「健康診断」:専門家による公的支援制度を活用しよう
    2. 2.あなたが使える武器:返済不要の補助金を活用しよう
    3. 3. 再び起業する選択肢:失敗はキャリアの終わりではありません
  6. 結論:夢を諦めるのではなく、この逆境を乗り越えよう

はじめに:会社員時代の安定が魅力的に見えるとき

一人で会社を経営している一人社長の皆さんは、日々大きなプレッシャーと孤独の中で戦っていることだと思います。

資金繰りの不安で眠れない夜、すべての決断を一人で下さなければならない重圧、そしてお客様や取引先に対する責任感。このような厳しい状況が続くと、ふと、かつての会社員時代を懐かしく思うことがあるかもしれません。

安定した給料、保証された休日、責任を分かち合える仲間、そして組織という守られた環境。その記憶は、荒波の中を一人で進む船長にとって、まるで心安らぐ港のように魅力的に映るでしょう。

しかし、その魅力に惹かれて安易に道を変える前に、一度立ち止まって、冷静にその選択肢を検討してみる必要があります。

この記事は、単に会社員に戻るメリット・デメリットを並べたものではありません。一人社長が会社員に戻るという道が、実際にはどれほど多くの困難を伴い、見過ごしがちな精神的・物理的なコストがかかるのかを、具体的にお伝えすることを目的としています。

結論を先に言えば、たとえ今の道が困難であっても、前に進み続けることには、会社員に戻るという選択がもたらす妥協や失うものよりも、はるかに大きな可能性がある、ということをお伝えできればと思います。

転職市場の厳しい現実:経営経験はプラス?それともマイナス?

1.内定率14.4%という数字に隠されたワナ

一見すると、元経営者の転職は難しくないように思えるかもしれません。ある調査では、元経営者の転職内定率は14.4%で、これは一般的な転職希望者の内定率6%の2倍以上というデータがあります。この数字だけを見ると、「経営者としての経験は転職に有利なんだ」と考えてしまいがちです。
出典:2017年1月実施 サーブコープ「生活に関するアンケート」起業後に就職活動をした経験がある社会人100名(22歳~69歳の男女)

しかし、この統計データには注意が必要です。この数字は、すべての元・一人社長に当てはまるわけではないからです。実際には、転職市場は二極化している可能性が高いと考えられます。つまり、大きな実績を持つ企業の役員経験者や、特定の専門分野で事業を成功させた経営者が、高いポジションで迎え入れられるケースが、全体の数字を引き上げているのです。

一方で、事業がうまくいかず、会社をたたむことを考えている多くの社長が、この統計の恩恵を受けられるとは限りません。むしろ、採用担当者が抱くさまざまな懸念に直面することになります。この14.4%という数字は、希望の光というよりは、一部の成功者によって作られた、誰もが当てはまるわけではないデータだと考えるべきでしょう。

2.採用担当者はこう見ている:「プライドが高い」「扱いにくい」、そして「また辞めるかも」

採用担当者の視点に立つと、元経営者の採用は、大きな可能性を秘めていると同時に、大きなリスクも伴う選択です。その経歴は確かに魅力的ですが、組織で働く上での懸念材料も多くあると見なされてしまうのです。

  • 「プライドが高く、柔軟性に欠けるのでは?」という懸念
    企業は、元経営者が「自分がトップだった」というプライドから、会社の文化に馴染めなかったり、上司の指示を素直に聞けなかったりするのではないかと心配します。組織の一員としてうまくやっていく能力が低いと判断されると、どんなに優れた経営スキルがあっても採用は難しくなります。
  • 「扱いにくい人材」というイメージ
    起業家精神の源である「現状を疑い、変化を求め、自分で考えて行動する力」は、既存の組織の中では「扱いにくい」「和を乱す」と見なされることがあります。企業は安定した運営を求めているため、予測不能な変化をもたらす可能性のある人材を必ずしも歓迎するわけではありません。
  • 「すぐに辞めてしまうのでは?」という離職リスク
    一度、自分の裁量ですべてを決められる自由な働き方を知った人が、再び組織のルールの中で働き続けられるのか、という根本的な疑問があります。企業としては、時間とコストをかけて採用した人材が、新しいビジネスを思いついたり、資金の目処が立ったりした途端に辞めてしまうのは、最も避けたいリスクの一つです。
  • 「事業に失敗した人」という先入観
    転職理由が事業の不振である場合、たとえそれが市場環境の変化といった自分ではどうしようもない要因だったとしても、採用担当者はまず「経営能力に問題があったのではないか」と考えてしまいがちです。このマイナスのイメージを払拭するのは、簡単なことではありません。

3.「なぜ会社を辞めたのか」:あなたの語るストーリーが重要になる

面接では、「なぜ事業をやめたのですか?」「なぜ今、会社員として働きたいのですか?」という質問が必ず聞かれます。「事業がうまくいかず、生活のために就職したい」と正直に話すことは、そのまま「失敗した人」というイメージを認めることになり、採用の可能性を大きく下げてしまいます。

そのため、自分の経験をポジティブなストーリーとして語り直す必要があります。「起業経験を通じて得た経営の視点を、今度は組織の中で活かし、会社の成長に貢献したい」といった、前向きな転職理由をしっかりと準備することが不可欠です。

しかし、このストーリー作りも簡単ではありません。あまりに野心的な目標を語れば「やはり独立を考えているのでは?」と離職を心配されますし、控えめに話せば「経営者としての覚悟が足りなかったのでは?」と能力を疑われてしまいます。採用担当者を納得させるには、この絶妙なバランス感覚が求められるのです。

4.求められる役割とのズレ:専門家か、何でも屋か

一人社長は、営業からマーケティング、財務、人事まで、あらゆる業務を一人でこなす「ゼネラリスト」です。しかし、企業が募集する求人の多くは、特定の分野に特化した「スペシャリスト」を求めています。この構造的なミスマッチが、元経営者の転職をさらに難しくしています。

採用担当者から見れば、元経営者は「何でもできるけれど、どの分野の専門家でもない」と映る可能性があります。あなたの最大の強みである「事業全体を見る力」は、特定の部署で特定の仕事をする上では、むしろ過剰な能力だと見なされてしまうことさえあるのです。

もちろん、経営企画や事業開発、新規事業の責任者といった、あなたの経験が直接活かせるポジションもあります。しかし、そうした求人は非常に少なく、競争も激しいのが現実です。その舞台では、大企業で着実にキャリアを積み、安定した実績を残してきた人たちと競わなければなりません。

起業という経験は、そうした場面では輝かしい経歴ではなく、むしろ異色の経歴として見られてしまうことさえあるのです。

会社員に戻ることで失うもの:精神的なコストを考える

1.日常生活の変化:自分で決める生活から、ルールに従う生活へ

会社員に戻るということは、単に働く場所が変わるだけではありません。それは、生活のあらゆる場面で、自分でコントロールする権利を手放し、組織のルールに従うことを意味します。

この変化がもたらす日々の小さなストレスは、少しずつあなたの起業家精神をすり減らしていくかもしれません。

  • 時間の自由を失う
    満員電車に乗って決まった時間に出社し、決められた時間に昼食をとり、自分の判断だけでは仕事を終えられない毎日。休みを取るにも、誰かの許可が必要です。時間はもはや自分の資産ではなく、会社から与えられたものに変わります。
  • 意思決定の自由を失う
    かつては会社の将来を左右する大きな決断を下していたあなたが、数千円の経費を使うためにも上司の承認を得なければならなくなります。会議で「これが正しい」と確信しても、それを選ぶ権限がない。この無力感は、主体的に動くことを大切にしてきた起業家にとって、耐え難い苦痛かもしれません。
  • やり方の自由を失う
    非効率だと感じる社内ルールや、古いツールを使わなければならないという制約。「これが会社のやり方だから」という一言の前では、改善したいという意欲も削がれてしまいます。問題を見つけ、解決することに喜びを感じてきた人にとって、これは精神的に大きな負担となります。

2.仕事の目的の変化:「自分の使命」から「与えられたタスク」へ

起業家と会社員の根本的な違いは、仕事への向き合い方にあります。起業家は、自分が信じるミッション(使命)を達成するために、自ら仕事を生み出します。「自分のため」に働き、その仕事が自己実現に直接つながっています。

一方、会社員は、誰かが作った大きな目標の一部を、タスク(業務)としてこなします。「他人のため」に働き、仕事は生活のための手段という側面が強くなります。

起業を経験したあなたは、「なぜ働くのか」という問いに対する答えを、自分自身で見つけ出しました。会社員に戻ることは、その答えを一度手放し、他の誰かから与えられた目的のために働くことを受け入れるということです。

これは単なるキャリアの変更ではなく、プロとしての自分を見失ってしまう感覚に陥るかもしれません。一度「社長の視点」を手に入れた人が、再び「従業員の視点」で物事を考えるのは、常に心の中にモヤモヤを抱えることになり、やがては燃え尽きてしまう危険性もあります。

3.社会的な評価の変化と「失敗」のイメージ

会社を辞めるという決断は、経済的な問題だけでなく、社会的な評価や心理的な面でも大きなダメージを伴うことがあります。

  • 周りからの視線
    「すごいね、自分の会社をやっているんだ」という尊敬の眼差しが、「会社、畳んだんだって?大変だったね」という同情や憐れみ、時には侮蔑の視線に変わることもあります。この変化は、あなたの自尊心を大きく揺さぶるかもしれません。
  • 自分の中での葛藤
    周囲の評価以上に辛いのが、自分自身が抱く「夢を諦めてしまった」「かっこ悪い」という敗北感です。起業家という特別な存在から、大勢いる会社員の一人に戻るという事実は、想像以上に重くのしかかることがあります。
  • お金に対する感覚のズレ
    収入がゼロになる恐怖を経験した起業家にとって、月収20万円でも「ゼロよりはマシ」と感じられることがあります。この「ゼロからのスタート」という感覚により、かつての会社員時代の年収500万円といった基準は、もはや意味を持たなくなるかもしれません。しかし、会社員の世界では年収が評価の大きな指標であり、この価値観の違いに適応するのは精神的に混乱を招く可能性があります。

4.新しい人間関係:「元社長」という特別な存在

新しい職場での人間関係も、一筋縄ではいかないかもしれません。同僚は「元社長」というあなたの経歴に少し警戒し、どう接していいか戸惑うかもしれません。上司は、自分よりも経営経験が豊富な部下を持つことに、やりにくさを感じる可能性もあります。

その中でうまくやっていくためには、意識的に「教えを乞う姿勢」を演じる必要があるかもしれません。本当は不要だと分かっているアドバイスにも「ご指導ありがとうございます」と頭を下げ、合理的ではないと感じる意見にも「勉強になります」と合わせる場面が出てくるでしょう。このような態度は、精神的に疲れる行為です。

さらに、会社組織では、必ずしも成果が正当に評価されるとは限りません。社内での立ち回りや人間関係が、実績以上に評価を左右するという現実に直面することもあります。自分の行動と結果が直接結びついていた世界から来たあなたにとって、この不透明で理不尽に感じるルールは、大きなストレスになるでしょう。

想像以上に大変な会社清算の手続き

1.会社を「たたむ」ための法律上のルール

事業をやめることは、「お店のシャッターを下ろす」ように簡単なことではありません。法律で定められた「解散」と「清算」という、厳格で時間のかかる手続きを踏む必要があります。

このプロセス自体が、安易に会社員に戻ることを難しくする大きな壁となります。

  • ステップ1:株主総会で解散を決める
    まず、会社としての活動をやめて、財産整理の手続きに入ることを正式に決定します。一人会社であっても、法律上、必ず必要な手続きです。
  • ステップ2:法務局で解散と清算人の登記をする
    解散を決めてから2週間以内に、法務局へ登記申請を行います。通常、元社長自身が財産整理を行う「清算人」になります。
  • ステップ3:官報で公告する
    会社の解散を社会に知らせるため、国の機関紙である「官報」に公告を載せます。これは、会社にお金を貸している人(取引先など)に名乗り出てもらうための手続きで、最低でも2ヶ月以上の期間を設けなければなりません。この期間が終わるまで、手続きは完了できません。
  • ステップ4:債権の回収と債務の支払い
    清算人は、会社の売掛金などを回収し、買掛金や借入金など、すべての借金を返済します。
  • ステップ5:残った財産を確定し、分配する
    すべての借金を返済した後に残った財産を確定させ、株主(つまりあなた自身)に分配します。
  • ステップ6:法務局で清算結了の登記をする
    すべての手続きが終わったら、再度法務局で清算結了の登記を行います。この登記をもって、あなたの会社は法律上、完全に消滅します。

この一連の手続きは、すぐにでも辞めたいというあなたの気持ちとは裏腹に、お金を貸している人を守るために設計されています。特に、2ヶ月という官報公告の義務期間があるため、物理的に「すぐに辞める」ことは不可能なのです。

この複雑な手続きの連続は、それ自体が精神的にも負担が大きいプロセスです。

2.会社をたたむためにかかる費用

会社をたたむのにも、お金がかかります。事業が苦しい状況で、さらに追加の出費を覚悟しなければなりません。

表1:株式会社の解散・清算にかかる費用の目安

費用項目内容費用の目安(円)
登録免許税法務局への登記申請時に国に納める税金です。41,000
– 解散及び清算人選任登記39,000
– 清算結了登記2,000
官報公告掲載料債権者に解散を知らせるための官報への公告掲載費用です。約 32,000
専門家への報酬複雑な手続きを司法書士や税理士に代行してもらうための費用です。150,000~300,000以上
– 司法書士報酬(登記申請代行)80,000~120,000
– 税理士報酬(解散・清算の確定申告)80,000~200,000以上
合計費用の目安(注:残っている借金の返済や未払いの税金は含みません)約 223,000~373,000以上

出典:VSG弁護士法人 法人破産・債務整理コラム「解散登記にかかる費用はどれくらい?税理士や司法書士に依頼した場合の費用相場も解説(最終更新2022.12.26)」より
出典:AGS media「会社の解散から清算までの手続きと流れ|やり方、期間、費用などを徹底解説(最終更新日:2025.7.3)」より

この表が示す現実は、非常に重いものです。事業の継続に苦しんでいる経営者が、会社を「閉じる」という目的のためだけに、数十万円もの追加費用を用意しなければならないのです。

このお金があれば、新しい広告を打ったり、運転資金に充てたりと、事業を立て直すためにできたことがあったのではないか、と考えてしまうかもしれません。

会社を辞めるには、高額な「退場料」が必要なのです。

3.数ヶ月以上かかる手続きの時間

費用だけでなく、時間も大きなコストです。資産や負債がほとんどないシンプルな会社でも、官報公告の2ヶ月間は短縮できないため、手続きが終わるまでには最低でも2ヶ月半ほどかかります。

もし、売却しなければならない資産があったり、回収が難しい売掛金があったり、複雑な契約を解消する必要があったりすれば、清算手続きは1年、2年と長引くことも珍しくありません。

その間、あなたは「元社長」でも「会社員」でもない不安定な立場で、面倒な事務処理に追われ続けることになります。これは、次のキャリアに進むための貴重な時間を失うだけでなく、精神的にも非常に疲れる期間です。

4.自分の夢を自分の手で終わらせる痛み

お金や時間といった物理的なコスト以上に辛いのが、清算手続きに伴う精神的な苦痛です。これは単なる事務作業ではありません。あなたが情熱を注ぎ、人生をかけて築き上げてきたものを、自らの手で一つ一つ解体していく行為だからです。

取引先に事業の終了を伝え、頭を下げる。これまで築いてきたブランドやノウハウが消えていくのを目の当たりにする。そして最後に、法務局に清算結了の登記を提出し、自分の会社が戸籍から消えるのを確認する。

この一連のプロセスは、事業が苦しいことそのものよりも、深く心を傷つける精神的に辛いプロセスとなりうるのです。

まだ諦めないで!前を向くための選択肢

ここからは、少し視点を変えてみましょう。今の危機を「終わり」の始まりではなく、「変化」の始まりと捉えることはできないでしょうか。

歴史を見れば、倒産寸前の危機から劇的な復活を遂げた企業はたくさんあります。最も苦しい時期こそが、最も大きな変化を生み出すきっかけになり得るということです。

1.あなたの事業の「健康診断」:専門家による公的支援制度を活用しよう

すべての問題を一人で抱え込む必要はありません。日本には、経営に苦しむ中小企業や個人事業主を支援するための、公的な制度が用意されています。

多くの一人社長がその存在を知らない、いわば「隠れたセーフティネット」です。

その代表的なものが「経営改善計画策定支援事業」です。

  • 早期経営改善計画策定支援
    資金繰りに少し不安を感じ始めた段階など、比較的早い段階で利用できるプログラムです。いわば事業の「健康診断」のようなもので、税理士や中小企業診断士といった国の認定を受けた専門家に計画作りを依頼する費用のうち、3分の2(上限25万円)を国が補助してくれます。
  • 経営改善計画策定支援
    金融機関への返済条件の変更(リスケジュール)など、より本格的な立て直しが必要な場合に利用できるプログラムです。こちらは事業の「集中治療」にあたり、補助額の上限も300万円と大きくなります。

これらの制度を使えば、本来は高額で依頼しにくいプロのコンサルティングを、非常に少ない自己負担で受けることができます。

孤独感と資金不足という悩みから解放され、客観的な視点から自社の課題を洗い出し、具体的な再生計画を立てるための、現実的で力強い第一歩となるはずです。

2.あなたが使える武器:返済不要の補助金を活用しよう

戦略的なアドバイスに加えて、事業を立て直すには具体的な資金も必要です。ここでも、一人社長が活用できる公的な補助金がたくさん用意されています。

これらは融資とは違い、原則として返済する必要のないお金です。

表2:一人社長が事業再生に活用できる主な補助金

補助金名目的・用途補助上限額(円)補助率
小規模事業者持続化補助金新しいお客様を獲得するための広告宣伝、ウェブサイト制作、店舗改装など。200万(創業枠)2/3
IT導入補助金会計ソフト、顧客管理システム、ECサイトなどのITツール導入。450万1/2~4/5(小規模事業者優遇)
中小企業省力化投資補助金人手不足を解消するためのIoT、ロボットなど省力化設備への投資。750万(小規模事業者)2/3(小規模事業者優遇)
ものづくり補助金革新的な新製品・サービスの開発に必要な設備投資など。750万(小規模事業者)2/3(小規模事業者優遇)

注:こちらの情報は記事作成段階のものになりますので、最新の情報は各補助金のサイトなどでご確認ください。

この表は、単なる資金調達のリストではありません。あなたの課題を解決するための具体的なヒントです。

売上が伸び悩んでいるなら「持続化補助金」で新しい販路を開拓できます。事務作業に追われているなら「IT導入補助金」で業務を効率化できます。「問題解決のためのお金がない」と考えるのをやめて、「どの補助金を使ってこの問題を解決しようか」と前向きな戦略を立てるきっかけにしてください。

3. 再び起業する選択肢:失敗はキャリアの終わりではありません

最後に、たとえ今の事業がうまくいかなかったとしても、それはあなたの「起業家としてのキャリア」の終わりを意味しない、という視点を持ちましょう。

アメリカのシリコンバレーでは「失敗は資産」と考えられています。

日本にも、一度や二度の失敗を乗り越えて大きな成功を収めた「シリアルアントレプレナー(連続起業家)」と呼ばれる人たちがたくさんいます。一度目の挑戦で得た教訓や人脈、そして失敗したという経験そのものが、次の成功の土台となるのです。

この視点を持つことで、今の苦しい状況を、もっと大きな流れの中で捉えることができるようになります。

一つの事業の失敗は、あなたの起業家人生の終わりではありません。それは、次なる挑戦に向けた、最も価値のある学びのプロセスの一部なのです。

結論:夢を諦めるのではなく、この逆境を乗り越えよう

この記事でお伝えしてきたように、一人社長が会社員に戻るという選択は、一見魅力的に見えますが、その裏には厳しい現実が隠されています。

元経営者という経歴が転職の足かせになる可能性、起業家精神が活かしにくい組織のルール、そして多大な費用と時間がかかる会社清算の手続きという、三重の壁があるのです。

しかし、この記事で本当に伝えたかったのは、単に会社員に戻ることの難しさだけではありません。今、あなたが直面している苦しい状況の捉え方を変えてほしい、ということです。

現在の苦しみは、失敗のサインなどではありません。それは、あなたを真の起業家としてさらに強くするための「試練」なのです。

資金繰りの苦労は財務管理能力を磨き、お客様の獲得に苦労した経験はマーケティングの知識を深め、孤独な決断を繰り返した経験は精神的な強さを育ててくれます。

安易に会社員に戻るという選択肢に飛びつくのではなく、もう一度、前を向いてみませんか。あなたは一人で戦う必要はありません。専門家の力を借りたり、補助金を活用することもできます。

起業家としての道は険しいかもしれませんが、それこそが、本当の意味での自由とやりがい、そして大きな成功の可能性を秘めた唯一の道なのですから。この苦しい状況こそ、あなたをさらに強くしてくれるはずです。

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2006年に起業。合同会社を設立するも2年後に株式会社へ組織変更。社員2人〜4人の小さな会社を5年間経営後、一人会社・一人社長へ。一人社長歴15年。

ソエルコト(一人会社・小さな会社の社長さんの経営パートナー)、マナブコト(習い事教室・学習塾の生徒募集)、ホームページ作成教室など、様々なスモールビジネスを展開中。一人会社・小さな会社の社長さんの支援実績も豊富で、日本全国にクライアントがいます。

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