一人会社・一人社長のための儲かる会社の作り方

一人社長ブログ
この記事の監修者・著者

2006年に合同会社を設立。2008年に株式会社へ組織変更。社員2人〜4人の小さな会社を5年経営後、一人会社・一人社長となり15年。

WebとAIを活用して様々なスモールビジネスを展開中。集客の仕組み化が得意。一人会社・小さな会社の社長さんの支援実績も豊富で、日本全国にクライアントがいます。

小南邦雄(一人社長・一人会社研究家)をフォローする

あなたは、きっと「一人社長として、もっと儲かる会社を作りたい!」と強く願っているはずです。

この記事では、そんなあなたのために、一般的な話やありふれた解説は抜きにして、「儲かる」という一点に絞り、ゴールにたどり着くための具体的なロードマップを提示することを目指しました。

ただし、この記事はあなたをワクワクさせる夢物語や、一発逆転の派手な成功法則を語るものではありません。むしろ、非常に現実的で、真面目に、そして着実に儲かる会社を作り上げていくための、具体的なロードマップです。

  1. 一人社長の利益の考え方:売上だけじゃない「儲け」の正体
    1. 1.あなたの会社は「統合資産システム」です
    2. 2.利益を最大化する3つのポイント
    3. 思考をシフトチェンジ!あなたは「事業家」から「ファンドマネージャー」へ
  2. 利益を生む仕組みを設計しよう!3つのビジネスモデル徹底比較
    1. 1.高付加価値フローモデル:専門家としての道を極める戦略
    2. 2.レバレッジ・フローモデル:「司令官」としてチームを率いる戦略
    3. 3.スケーラブル・ストックモデル:「資産」を構築する戦略
    4. 「司令官」モデルは、全ての戦略の土台となる基本戦略です
  3. ハイブリッド戦略:フローで稼いで、ストックを育てる
    1. 1.フロー型とストック型の理想的な関係
    2. 2.段階的実行プラン(ハイブリッドモデル)
    3. ハイブリッドモデルは、効果的なリスク管理方法でもある
  4. 「儲かる会社」を作るためのロードマップ
    1. フェーズ1:キャッシュフローの土台を築く(1〜6ヶ月目)
    2. フェーズ2:仕組み化と権限委譲(7〜12ヶ月目)
    3. フェーズ3:資産の構築とスケールアップ(13〜24ヶ月目)
    4. フェーズ4:最終章 – さらなる拡大か、売却か(25ヶ月目以降)
  5. 重要な経営指標(KPI):一人社長のためのデータ経営
    1. 1.「見るべき数字は3つだけ」という考え方
    2. 2.KPI設定のシンプル・フレームワーク:目標 → 戦略 → KPI
    3. 3.あなたのビジネスモデルに合わせた必須KPIテーブル
  6. 最終的な目標の一つ:事業売却と、その価値を最大化する方法
    1. 1.なぜストック型ビジネスは高く売れるのか?
    2. 2.一人社長の会社の「値段」はどう決まる?
    3. 3.会社の価値の基礎、「MRR」を正しく計算しよう
    4. 結論:「売るため」に作ることは、「安定のため」に作ることと同じ

一人社長の利益の考え方:売上だけじゃない「儲け」の正体

まず最初に、一人社長にとって「儲かる」ことの定義を一緒に見直してみませんか?

それは、単に会社の利益を最大化することだけではありません。本当のゴールは、会社と社長個人を一つの金融システムとして捉え、社長個人の総純資産を最大化することです。

1.あなたの会社は「統合資産システム」です

一人社長の会社は、大企業とは全く違う、あなただけの特別な金融ツールです。

その目的は、会社から社長個人へのお金の流れを、最も効率的にデザインすることにあります。

そのためには、「会社の利益(法人税がかかります)」「社長への役員報酬(所得税や社会保険料がかかります)」「事業を成長させるための再投資」という3つの要素のバランスを、うまく取っていく必要があります。

これら全てを自分でコントロールできることこそ、一人社長が持つ最大の強みなのです。

2.利益を最大化する3つのポイント

ポイント1:圧倒的に有利なコスト構造

一人社長の最大のメリットは、なんといっても固定人件費がほぼゼロであることです。

これにより、本来なら人件費に消えていたであろう資金を、マーケティングや新しい技術の導入といった、未来の成長への戦略的な投資に回すことができるのです。

ポイント2:役員報酬という名の「税金最適化ツール」

役員報酬は、単なる給料ではありません。法人税と個人の所得税、この2つの税金の負担が最も軽くなるように調整するための、戦略的なツールなのです。

年間の収益と費用を予測し、トータルで支払う税金が最小になる役員報酬の額を設定しましょう。ただし、役員報酬を高くしすぎると、銀行からの融資や会社を売却する際に、会社の評価が下がってしまう可能性もあるので注意が必要です。

ポイント3:「事業経費」の範囲を最大限に活用する

一人社長の法人は、個人事業主と比べて、より広い範囲の支出を経費として計上できます。

これにより、課税対象となる会社の利益を賢く圧縮し、再投資やあなたの手元に残るお金を増やすことができるのです。

思考をシフトチェンジ!あなたは「事業家」から「ファンドマネージャー」へ

これからのあなたは、単に事業を運営する「オペレーター」ではありません。自分自身を「個人資産を運用するファンドマネージャー」だと考えてみてください。

あなたの会社が「ファンド」で、事業が生み出すキャッシュフローが「運用資産」です。

あなたの仕事は、売上を上げることだけではありません。売上から経費を引いて残った資本をこの3つに、最大の効率で配分することこそが、あなたの最も重要なミッションになります。

  • 個人の報酬(あなたの生活のため)
  • 税金(事業を続けるためのコスト)
  • 再投資(未来の資産を育てるため)

従来のビジネスでは「売上 − コスト = 利益と考えますが、一人社長の現実はもっと奥が深いです。

コストの中に、あなた自身がコントロールできる「役員報酬」が含まれているからです。

本当のゴールは「(あなたの手取り報酬 + 会社の純資産の増加額) ÷ 総売上」という指標を最大化することです。

税金を支払う前の利益を最大限活かし、給与として受け取るか、会社に残すか、あるいは未来のための経費として使うか。常に最適な選択を問い続ける、ファンドマネージャーとしての視点が、これから紹介するすべての戦略の土台となります。

利益を生む仕組みを設計しよう!3つのビジネスモデル徹底比較

「フロー型か、ストック型か」という単純な二択で悩んでいませんか?

ここでは、一人社長が圧倒的に儲けるための、3つの具体的なビジネスモデルを提案します。それぞれの仕組み、必要なスキル、そしてどれくらい儲かる可能性があるのかを、詳しく見ていきましょう。

1.高付加価値フローモデル:専門家としての道を極める戦略

  • コンセプト
    あなた自身の専門性を究極まで高め、超高単価なプロフェッショナルとして利益を最大化するモデルです。戦略コンサルティングや専門的なクリエイティブ業務など、あなたのスキルそのものが製品となり、1時間あたり、あるいは1プロジェクトあたりの単価を極限まで高められる場合に非常に有効です。
  • 仕組み
    このモデルでは、1つのプロジェクトで数百万円を稼ぐことも夢ではありません。例えば、ハイレベルなコンサルティングの世界では、月額の顧問料が200万円から800万円に達することもあります(※ただし、これは高度な専門性と豊富な実績を持つトップレベルのコンサルタントの事例です)。あなたの「時間」と「知性」が、圧倒的な利益を生み出す源泉となります。
  • 必要なもの
    深い専門知識、強力なパーソナルブランド、そして誰もが納得する実績。これらは絶対に必要です。この道を選ぶなら、自分自身のスキルアップと評判作りに、先行投資を惜しまない覚悟が求められます。

2.レバレッジ・フローモデル:「司令官」としてチームを率いる戦略

従来型:外部パートナーを率いる「司令官」モデル

  • コンセプト
    あなたは戦略を立てる「司令官」に徹し、実行部隊として外部のフリーランサーや業務委託パートナーで構成されるチームを率いるモデルです。これにより、一人社長の最大の弱点である「時間の制約」を乗り越えることができます。
  • 仕組み
    あなたは、戦略立案、営業、品質管理といった、最も付加価値の高い仕事に集中します。そして、動画編集、ライティング、プログラミング、顧客サポートといった実行部分は、外部の専門家チームに任せます。あなたの利益は、クライアントから受け取る金額と、外部パートナーへ支払う費用の差額から生まれます。
  • ケーススタディ
    500名以上の業務委託メンバーを率いて、年商40億円規模の事業を築き上げた山本智也氏の「クラウドDX経営」は、このモデルが持つ驚異的な可能性を示しています。(※これは極めて成功した事例であり、誰もが同じ規模を達成できるわけではありませんが、このモデルの拡張性の高さを示す好例です)
  • 重要なポイント: 外注すると、自分で全て行うよりも費用はかさむかもしれません。しかし、それ以上に価値があるのは、社長であるあなたの「時間」という最も貴重な資産を解放し、事業を大きく成長させられる点にあります。

2025年以降の新戦略:AIエージェントを率いる「司令官」モデル

2025年以降、「司令官」モデルは新たな次元へと進化します。

これまではフリーランサーや業務委託パートナーといった「人間」のチームを率いるのが主流でした。しかし、これからは専門的なスキルを持つ複数の「AIエージェント」で構成された、あなただけのデジタルチームを率いる時代が到来します。

これは単にAIツール(ChatGPTやGemini)を使うという話ではありません。自律的に協働するAIエージェントのチームを構築し、事業運営を根本から変革する戦略です。

構築できるAIチームの具体例

AIエージェントは、それぞれに特定の役割、目標、ツールを与えられた「専門家」として機能します。これらを組み合わせることで、一人社長は以下のような強力な仮想チームを構築できます。

  • AIマーケティングチーム
    • リサーチ担当エージェント
      競合の動向や市場トレンドを24時間体制で調査・分析します。  
    • コンテンツ制作エージェント
      リサーチ結果に基づき、ブログ記事やSNS投稿の草案を複数パターン生成します。  
    • データ分析エージェント
      キャンペーンの成果を分析し、改善点をレポーティングします。  
  • AI営業・カスタマーサポートチーム
    • 一次対応エージェント
      顧客からの問い合わせに24時間365日即時対応し、よくある質問には自動で回答します。  
    • 情報検索エージェント
      複雑な問い合わせに対し、社内マニュアルや過去の事例を検索し、回答案を提示します。  
    • 日程調整エージェント
      顧客との商談や打ち合わせの日程を自動で調整します。  
  • AIバックオフィスチーム
    • 秘書エージェント
      メールの仕分けや要約、会議の議事録作成、タスク管理を自動で行います。  
    • 経理エージェント
      請求書の発行、経費データの入力、入金確認と督促までを自動化します。

構築すべきチームの考え方(戦略)

重要なのは、AIチームを「人間の代替」ではなく「人間の能力を拡張するパートナー」と捉えることです。

AIチーム構築で目指すべきは、社長であるあなたを単純作業や定型業務から解放し、人間にしかできない高付加価値な仕事に集中できる環境を作ることです。  

  • AIに任せるべき業務
    データ収集、分析、定型的な文章作成、スケジュール調整など、再現性が高く時間のかかるタスク。  
  • 人間が集中すべき業務
    事業のビジョン策定、新しいビジネスモデルの創造、重要顧客との信頼関係構築、最終的な経営判断。

この新しいモデルにおいて、一人社長の役割は「プレイヤー」から、人間とAIからなるハイブリッドチームを指揮する真の「司令官」へと変わります。

どのAIエージェントにどの役割を与え、どのように連携させればチーム全体のパフォーマンスが最大化するかを設計し、管理することが、2025年以降の儲かる会社作りにおける最も重要なスキルとなるでしょう。

注:この「司令官」フレームワークの重要性については、次の3つ目のモデルを説明した後、改めて詳しく解説します。

3.スケーラブル・ストックモデル:「資産」を構築する戦略

  • コンセプト
    一人のお客様に対するあなたの労働時間を最小限に抑えながら、継続的に収益が入り続ける仕組み、つまり真の「ビジネス資産」を作り上げるモデルです。
  • 仕組み
    定期購入、会員制、レンタル、ライセンス提供などがこのモデルにあたります。最も重要なのは、あなたの収入が、あなたの労働時間と直接結びつかなくなる点です。一度システムを構築してしまえば、あなたが働いていない時間も、収益を生み出し続けてくれる可能性があります。
  • 代表例 – 会員制/オンラインサロンモデル
    これは専門知識を持つ一人社長にとって、最も始めやすく、かつ強力なストックモデルの一つです。その立ち上げプロセスを具体的に見ていきましょう。
    • フェーズ1:土台作り
      まずは「誰に、どんな価値を提供するのか」というコンセプトと、理想のお客様像(ペルソナ)を明確に定義します。
    • フェーズ2:立ち上げ
      最初は「モニター価格」を設定して、入会のハードルをぐっと下げましょう。そして、SNSやメールマガジンなど、あなたがすでに持っている発信力を活かして、最初のメンバーを集めます。
    • フェーズ3:価値の提供
      メンバーが「入ってよかった!」と感じるような価値あるコンテンツ(動画や記事など)と、メンバー同士が交流できるコミュニティ(掲示板やライブQ&Aなど)の両方を提供し、満足度を高めて長く続けてもらうことが重要です。「人生逃げ切りサロン」や「リベシティ」といった成功事例は、専門スキルを学べる場と、強い絆で結ばれたコミュニティを組み合わせることの有効性を示しています。
    • フェーズ4:仕組み化
      決済システムを導入し、毎月の会費請求や会員管理を自動化することが、ビジネスを大きくしていくための鍵となります。

「司令官」モデルは、全ての戦略の土台となる基本戦略です

ここまで3つのモデルを紹介してきましたが、実は「司令官」フレームワークは、単なる選択肢の一つではありません。

他の2つのモデルを高いレベルで成功させるために不可欠な、いわばビジネスの土台となる基本戦略なのです。

高単価な専門家として成功するためには、あなたは自分の専門分野とクライアントとの関係構築に100%集中する必要があります。

事務作業やリサーチ、資料作成といった雑務は、あなたの貴重な時間を奪うだけです。成功しているコンサルタントは、例外なく「司令官」としてバーチャルアシスタントやAIツールなどを活用し、自分の時間を守っています。

同じように、オンラインサロンのようなストックモデルも、コンテンツ制作、コミュニティ管理、マーケティング、会員からの問い合わせ対応など、実は非常に手間がかかります。事業が成長するほど、社長自身がボトルネックになってしまうのです。

趣味の延長で終わらせず、ビジネスとして大きく育てるためには、「司令官」の視点で外部の専門家(コミュニティマネージャー、コンテンツ制作者など)やAIエージェントをうまく活用することが絶対に必要になります。

ですから、儲かる会社への本当の道筋は、3つのモデルから1つを選ぶことではありません。フロー型かストック型のどちらで「資産」を築くかを決め、それを大きく育てるための「実行戦略」として「司令官」フレームワークを導入することなのです。

ハイブリッド戦略:フローで稼いで、ストックを育てる

ここからは、一人社長にとって最も現実的で、かつ強力な戦略をご紹介します。

それは、フロー型ビジネスで現在の収益を確保し、そこで得た資金でストック型ビジネスという「未来の資産」を育てるというアプローチです。

1.フロー型とストック型の理想的な関係

この戦略における、それぞれのビジネスの役割は明確です。

  • フロー型ビジネスの役割
    Webサイト制作やコンサルティングのようなフロー型ビジネスは、すぐにまとまった現金を生み出し、あなたの実績や顧客リストを増やしてくれます。事業をスピーディーに立ち上げるための力強い推進力となります。
  • ストック型ビジネスの役割
    会員制サービスのようなストック型ビジネスは、長期的な安定と予測可能な収益、そして売却可能な「資産」としての価値をもたらしてくれます。事業を安定させる基盤のような存在です。ただし、収益化までに時間がかかり、多くの先行投資が必要になるという側面もあります。

2.段階的実行プラン(ハイブリッドモデル)

  • フェーズ1:フローを極める
    まずは、あなたの専門性を活かした高単価なサービスに集中し、安定したキャッシュフローと確固たる評判を築き上げます。これは、次のステップに進むための「活動資金」を確保し、あなたのビジネスコンセプトが市場に通用することを証明する段階です。
  • フェーズ2:ストック型ビジネスのアイデアを見つける
    フロー型ビジネスで関わるお客様が、繰り返し抱えている悩みやニーズを注意深く観察してください。そこには、ストック型ビジネスの素晴らしいアイデアの源泉が隠されています。例えば、Webサイト制作者なら、サイトを納品した後に必ず発生するメンテナンスやセキュリティ対策といった継続的なニーズが、まさにそのアイデアです。
  • フェーズ3:利益を再投資する
    フロー型ビジネスで得た利益を、ストック型資産の構築(例えば、会員サイトの開発やコンテンツ制作、初期のマーケティング費用など)に計画的に再投資していきます。
  • フェーズ4:徐々にシフトする
    ストック型ビジネスからの継続的な収益が育ってきたら、徐々にフロー型ビジネスへの依存度を下げていきましょう。これにより、さらに多くの時間を資産のスケールアップに注力できるようになります。

ハイブリッドモデルは、効果的なリスク管理方法でもある

このハイブリッドモデルは、単なる成長戦略ではありません。借金や株式譲渡といった外部からの資金調達に頼らず、新しい挑戦を自己資金でまかなうことを可能にする、一人社長に最適化されたリスク管理方法なのです。

ストック型ビジネスをゼロから立ち上げるのは、正直なところリスクが高いです。初期コストがかさみ、利益が出るまでには長い時間がかかります。多くの一人社長は、収入がゼロの期間に耐えられません。

そこで活躍するのが、フロー型ビジネスです。フロー型ビジネスが安定したキャッシュフローを生み出してくれるおかげで、あなたは安心してストック型ビジネスの立ち上げという、より大きな挑戦に臨むことができるのです。

さらに、フロー型ビジネスは、新しいアイデアを試す絶好の機会としても機能します。クライアントと直接仕事をすることで、報酬を得ながら、将来のストック型ビジネスが解決すべき具体的な課題を発見できるのです。

これは、市場のニーズからかけ離れた製品を開発してしまうリスクを、劇的に減らしてくれます。

このように、ハイブリッドモデルは、あなたの経営を「行き当たりばったり」から「計画的で戦略的」なものへと変貌させます。

安定した事業で稼ぎながら、より大きなリターンが期待できる未来の資産を育てる。この自己完結した持続可能なサイクルこそが、一人社長が目指すべき理想の形なのです。

「儲かる会社」を作るためのロードマップ

この章では、これまでの全てのアイデアを一つにまとめ、今日からあなたが踏み出すべき具体的なステップを、タイムライン形式で示します。

これは、高い収益性を持ち、かつ将来的に売却も可能な会社を、理論上最速で作り上げるためのロードマップです。

フェーズ1:キャッシュフローの土台を築く(1〜6ヶ月目)

  • 目標
    高い利益率のフロー型ビジネスで、月間100万円以上の純利益を安定して生み出すこと。
    ※この期間は理想的なケースです。業種や既存の人脈、専門性のレベルによって、達成までに必要な時間は変動します。焦らず着実に進めることが重要です。
  • 行動計画
    • あなたの最も得意な高単価スキル(例:マーケティングコンサルティング、専門デザイン)を一つに絞り込みます。
    • まずは3〜5社の高単価クライアントを獲得することだけに全力を注ぎます。
    • この段階で重要な数字は「リード獲得率:問い合わせが何件来たか」と「顧客転換率:何件契約につながったか」だけです。それ以外のことは一旦忘れましょう。
    • 同時に、行っている全ての作業プロセスやクライアントとのやり取りを、細かく記録・文書化しておきます。これが、次のフェーズへの重要な準備になります。

フェーズ2:仕組み化と権限委譲(7〜12ヶ月目)

  • 目標
    収益を維持、または増やしながら、あなたの労働時間を半分に減らすこと。そして、プレイヤーから「司令官」へと役割を変えること。
  • 行動計画
    • フェーズ1で作成した「仕事の記録」をマニュアルとして、最初の外部パートナー(例えば、バーチャルアシスタントやプロジェクトマネージャー)に仕事を任せ始めます。
    • プロジェクト管理ツール(Trello, Slackなど)、顧客管理ツール(CRM)、会計ソフトといった、ビジネスを効率化するITツールを本格的に導入します。
    • クライアントワークの中から、ストック型ビジネスにつながるアイデアを抽出し、そのテーマに関する情報発信(ニュースレターやSNSなど)を始めて、小さなコミュニティを育て始めます。

フェーズ3:資産の構築とスケールアップ(13〜24ヶ月目)

  • 目標
    小さなストック型ビジネス(例えば、シンプルな会員制サイト)を立ち上げ、最初の有料会員100名を獲得すること。
  • 行動計画
    • フロー型ビジネスの仕組み化によって生まれた「時間」と「お金」を、ストック型資産の構築に集中投資します。
    • フェーズ2で育て始めたコミュニティに向けて、サービスのベータ版を公開します。
    • この段階で最も重要な数字は「毎月の継続収益(MRR)」と「解約率」です。会員からのフィードバックに真摯に耳を傾け、サービスの改善に全力を尽くします。
    • 「司令官」として、今度はストック型ビジネスを支えるための専門家(コミュニティマネージャー、コンテンツ制作者など)をチームに加えていきます。

フェーズ4:最終章 – さらなる拡大か、売却か(25ヶ月目以降)

  • 目標
    安定して成長するストック型資産を確立し、次の戦略的な一手を選択すること。
  • 選択肢A多角化(ポートフォリオマネージャーになる)
    • 最初のストック型ビジネスが軌道に乗ったら、その成功体験を元に、2つ目のストック型ビジネスを立ち上げます。既存のコミュニティや運営の仕組みを活用すれば、1つ目よりもずっと楽に立ち上げられるはずです。複数の事業を効率的に運営するフレームワークを活用しましょう。
  • 選択肢B売却準備(アセットセラーになる)
    • ストック型ビジネスの売却価値を最大化することに集中します。具体的には、財務諸表をきれいに整理し、誰でも引き継げるように全ての業務プロセスを文書化し、そして「MRR成長率」や「顧客生涯価値(LTV)」といった、買い手が最も重視する数字を改善していきます。この選択肢については、後の章でさらに詳しく解説します。

重要な経営指標(KPI):一人社長のためのデータ経営

壮大なロードマップを描きましたが、一人で事業を運営していると、日々の忙しさに追われて「今、自分はどこに向かっているんだっけ?」と見失いがちです。

この章では、そうならないための、事業の状態を正確に把握するための指標(KPI)の活用法をお伝えします。

KPI(重要業績評価指標)と聞くと難しく感じるかもしれませんが、一人社長にとっては、限られたリソースをどこに集中すべきかを示してくれる、必要不可欠な指針なのです。

1.「見るべき数字は3つだけ」という考え方

一人社長が20個ものKPIを毎日チェックするのは不可能です。

だからこそ、「今の自分にとって本当に重要な数字は何か?」を考え、最大でも3〜5個のコアな指標に絞って追いかけることを提案します。

目的は、複雑な分析をすることではなく、データに基づいて素早く正しい判断を下すことです。

2.KPI設定のシンプル・フレームワーク:目標 → 戦略 → KPI

意味のあるKPIを設定するための、とてもシンプルで強力なフレームワークをご紹介します。

  • 目標(KGI)を決める
    あなたが達成したい、たった一つの最も重要な成果は何ですか?(例:「利益を30%増やす」)
  • 戦略を決めるその目標を、どうやって達成しますか?(例:「高単価のクライアントを増やす」)
  • KPIを決める
    その戦略がうまくいっているかを知るための、毎日/毎週チェックすべき具体的な数字は何ですか?(例:「営業の電話をかけた数」「提案が契約につながった確率」)

3.あなたのビジネスモデルに合わせた必須KPIテーブル

あなたのビジネスモデルと、今いるロードマップのフェーズに合わせて、具体的にどの数字を見ればよいのかを一覧にしました。

ビジネスモデル / ロードマップフェーズ主要目標 (KGI)主要戦略見るべき必須KPI (最大3つ)なぜこの数字が重要か & 参照
高付加価値フロー
(フェーズ1)
キャッシュフローの最大化高単価クライアントの獲得1. 問い合わせの増加率 2. 提案の受注率 (%) 3. 平均案件単価 (円)この段階では、営業活動がうまくいっているかが全てです。これらの数字が、未来の売上を直接的に予測してくれます。
レバレッジ・フロー
(フェーズ2)
利益と自由時間の増加実行業務の外部委託1. プロジェクト毎の利益率 (%)
2. あなたが戦略的な仕事に使えた時間の割合 (%)
3. 顧客満足度
あなた個人の頑張りから、チーム(システム)としての効率性へと視点を移します。利益率を確保しつつ、あなたの時間をどれだけ生み出せたかが重要です。
スケーラブル・ストック
(フェーズ3)
継続収益の成長会員数の拡大と維持1. 毎月の継続収益 (MRR)
2. 顧客の解約率 (%)
3. 顧客生涯価値 (LTV)
これらはサブスクリプションビジネスの健全性を示す特に重要な3つの指標です。ビジネスの長期的な価値と安定性を測ることができます。
売却準備
(フェーズ4B)
会社(事業)の価値の最大化売却価値を高める指標の改善1. MRRの成長率 (前月比 %)
2. 純収益維持率 (%)
3. SDE (売主の裁量所得)
これらは、将来あなたの会社を買うかもしれない人が、買収価格を決めるときに間違いなくチェックする、まさにその数字です。

このテーブルは、「やることが多すぎて何から手をつければいいか分からない!」という一人社長の悩みに、明確な答えを与えてくれます。

各段階でどの指標に集中すべきかが分かれば、日々の行動がブレなくなり、モチベーションを維持しながら着実に目標へと進んでいけるはずです。

最終的な目標の一つ:事業売却と、その価値を最大化する方法

最終章では、あなたが丹精込めて育てたストック型ビジネスを、最終的にどうするのか、というテーマに踏み込みます。そう、事業売却です。

ここでは、一人社長が運営する会社がどのように評価され、どうすれば買い手にとって魅力的で、より高い価格で売れる事業を構築できるのかを解説します。

1.なぜストック型ビジネスは高く売れるのか?

  • 予測可能で安定しているから
    買い手は、将来の収益が予測できるビジネスに高い価値を感じます。毎月安定した収益が見込めるストック型ビジネスは、売上が不安定なフロー型ビジネスに比べて、はるかに魅力的な投資対象なのです。
  • 社長がいなくても成長できるから
    うまく仕組み化されたストック型ビジネスは、あなた個人に依存しません。これは、買い手が事業を引き継いだ後も、さらに成長させられることを意味し、価値を大きく高める要因になります。
  • 価値を測る共通の評価基準「MRR」があるから
    MRR(月次経常収益)やARR(年次経常収益)は、現代のサブスクリプションビジネスの価値を評価するための世界共通の評価基準です。この分かりやすさが、売買をスムーズにします。

2.一人社長の会社の「値段」はどう決まる?

  • 基本の計算式
    会社の価値は、基本的には「利益の指標 × 倍率(マルチプル)」というシンプルな式で計算されます。
  • 利益の指標
    小規模なビジネスの場合、これは多くの場合「SDE(売主の裁量所得)」という指標が使われます。これは、会社の利益に、社長の役員報酬や個人的な経費などを足し戻した、事業本来の収益力を示す数字です。
  • 倍率(マルチプル)
    ここが最も重要なポイントです。この倍率は、事業のリスクの低さと成長性の高さによって決まります。解約率が低く、成長率が高いストック型ビジネスは、非常に高い倍率がつく可能性があります。一般的な小規模オンラインビジネスの売却相場は、月間利益の24倍〜36倍(年間利益の2〜3倍)と言われていますが(※海外のマイクロM&Aマーケットプレイス等での一般的な相場を参考)、質の高いサブスクリプションビジネスは、これをはるかに超える評価を得ることも珍しくありません。

3.会社の価値の基礎、「MRR」を正しく計算しよう

MRRは、あなたのストック型ビジネスの価値を決める最も重要な数字です。だからこそ、その計算方法を正確に理解しておきましょう。

  • 基本の計算
    MRR(月次経常収益) = 月額料金 × 顧客数
    これが最もシンプルな計算式です。
  • 事業の成長性を分析するためのMRRの内訳
    事業の健全な成長をより詳しく見るためには、MRRをいくつかの要素に分解して考えます。
    • 新規MRR
      その月に新しく契約してくれたお客様から得られるMRRです 。
      新規MRR = 新規顧客数 × 月額料金
      月額5,000円のプランに10人が新規加入した場合、新規MRRは50,000円です。
    • 拡大MRR
      既存のお客様がより高い料金プランにアップグレードしたことで増えたMRRです。
      拡大MRR = アップグレードによる月額料金の差額の合計
      (例)5人のお客様が月額5,000円のプランから8,000円のプランに変更した場合、拡大MRRは (8,000円 – 5,000円) × 5人 = 15,000円 となります。
    • 縮小MRR
      既存のお客様がより安い料金プランにダウングレードしたことで減ったMRRです。
      縮小MRR = ダウングレードによる月額料金の差額の合計
      (例)3人のお客様が月額8,000円のプランから5,000円のプランに変更した場合、縮小MRRは (8,000円 – 5,000円) × 3人 = 9,000円 となります。
    • 解約MRR
      お客様がサービスを解約したことで失われたMRRです。
      解約MRR = 解約した顧客数 × その顧客の月額料金
      (例)月額8,000円のプランを利用していた2人が解約した場合、解約MRRは16,000円です。
  • 当月のMRRを算出する計算式
    当月のMRR = 前月のMRR + 新規MRR + 拡大MRR – 縮小MRR – 解約MRR
    この計算式で、事業の健全な成長を正確に把握することができます。

結論:「売るため」に作ることは、「安定のため」に作ることと同じ

多くの人は、「事業を育てること」と「事業を売る準備をすること」を、全く別のことだと考えています。

しかし、この記事の最後のメッセージは、ストックモデルを構築する一人社長にとって、この2つは全く同じ活動である、ということです。

買い手が求めるものは何でしょうか?

予測可能な収益、低い解約率、マニュアル化された業務プロセス、そして、創業者がいなくても回る仕組みです。

あなたが自分の事業に求めるものは何でしょうか?

予測可能な収益(収入が安定するから)、低い解約率(常に新規顧客を探し回らなくて済むから)、マニュアル化された業務プロセス(人に任せて休暇が取れるから)、そして、自分がいなくても回る仕組み(本当の自由を手に入れるため)です。

求めるものは、完全に一致しています。

高いMRR成長率、低い解約率といった指標は、買い手が高値を付ける対象であると同時に、健全で成長しているビジネスそのものの定義なのです。

ですから、あなたはわざわざ「出口戦略」を考える必要はありません。ストック型資産を構築し、「司令官」として仕組み化を進め、MRRや解約率といったKPIを追いかけることそのものが出口戦略なのです。

あなた自身のために最高の事業を構築することに集中すれば、それは自動的に、将来の買い手にとって最も価値のある資産にもなるのです。

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この記事の監修者・著者

2006年に起業。合同会社を設立するも2年後に株式会社へ組織変更。社員2人〜4人の小さな会社を5年間経営後、一人会社・一人社長へ。一人社長歴15年。

ソエルコト(一人会社・小さな会社の社長さんの経営パートナー)、マナブコト(習い事教室・学習塾の生徒募集)、ホームページ作成教室など、様々なスモールビジネスを展開中。一人会社・小さな会社の社長さんの支援実績も豊富で、日本全国にクライアントがいます。

大変なこと・辛いことをたくさん経験してきた小さな会社の社長として、一人社長を長くやってきた先輩として、そして一人会社研究家として、お役立ち記事を監修・執筆しています。

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