ちょっと待った!そのシニア起業、本当に大丈夫?退職金を溶かす前に知るべき「甘くない現実」

シニアの起業 社長ブログ
この記事を書いた人

2006年に合同会社アルクコト設立。2008年に株式会社アルクコトに組織変更。現在は一人会社・一人社長で、様々なスモールビジネスを展開中。

自身の20年間で築き上げたマーケティングスキル・Web制作スキル、AIスキルに加え、一流マーケターや一流コンサルタントのノウハウ・成功例・幅広い知見で構築した第二の頭脳(セカンドブレイン)を活用していることが強み。

「集客の仕組み化」と「話を聴くこと」が得意で、一人会社の社長さん・小さな会社の社長さんの支援実績も豊富。

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「人生100年時代。定年後も、長年の経験やスキルを活かして自分のビジネスを始めませんか?」

最近、テレビや雑誌、インターネットで、こんなキラキラした言葉をよく見かけませんか?

まるで、シニアが起業することが、輝かしいセカンドライフを送るための唯一の選択肢であるかのように語られています。

しかし、その言葉を鵜呑みにして、準備不足のまま起業の世界に足を踏み入れてしまうのは、あまりにも危険です。

この記事は、シニア起業をむやみに推奨するものではありません。むしろ、その逆です。

これからお話しするのは、シニア起業の「光」の部分ではなく、ほとんど語られることのない「厳しい現実」と「見過ごされがちな罠」についてです。

もし、あなたが少しでも「起業しようかな」と考えているなら、大切な退職金や老後の資金を投じる前に、どうかこの記事を最後まで読んでください。

これは、あなたの輝かしい未来を守るための、少し辛口な、しかし誠実なメッセージです。

なぜシニアは「起業」に惹かれるのか?その動機と社会的背景

そもそも、なぜ多くのシニアが起業という選択肢に魅力を感じるのでしょうか。その背景には、個人の想いと社会的な風潮の両方があります。

あなたの動機はどれですか?

  • 生きがい・社会貢献
    「長年培ったこのスキルを、もっと社会の役に立てたい」「会社のためではなく、自分の信じる価値のために働きたい」といった、やりがいや社会とのつながりを求める気持ち。これは非常に尊い動機です。
  • 自由な働き方への憧れ
    「もう組織のしがらみはこりごりだ」「自分のペースで、好きな時間に働きたい」という、会社員生活からの解放を願う気持ち。
  • 経済的な不安
    「年金だけでは、この先の長い人生が不安だ」「少しでも収入を増やして、ゆとりのある生活を送りたい」という、切実な金銭的な理由。

これらの動機に、優劣はありません。しかし、「キラキラしたイメージ」だけで突っ走ってしまうと、足元にあるはずの落とし穴に気づけなくなってしまいます。

「シニア起業ブーム」という追い風の危うさ

「人生100年時代」「生涯現役」といった言葉がメディアで踊り、国もシニアの活躍を後押しする制度を整えています。このような社会全体の「応援ムード」は、一見すると心強いものに思えるでしょう。

しかし、このポジティブな情報ばかりが溢れる状況は、シニア起業に潜むリスクや失敗の可能性を見えにくくしてしまっているという側面も持っています。

まるで、たくさんの応援団の声援に後押しされて、準備運動もせずに崖から飛び降りようとしているようなものなのです。

シニア起業「3つの神話」の崩壊。メリットが罠になる時

シニア起業を勧める記事では、必ずと言っていいほど「シニアならではの強み」が語られます。

それは主に「経験」「人脈」「資金」の3つです。しかし、この”三種の神器”が、実はあなたの足をすくう最大の罠になる可能性を考えたことはありますか?

神話1:「豊富な経験」は通用しない?

長年の会社員生活で培った経験は、確かにあなたの財産です。しかし、その経験は、本当に「あなた個人の実力」だったのでしょうか?

  • 会社の看板を外した途端、魔法は解ける
    あなたが大きな契約をまとめられたのは、会社のブランド力や信用があったからかもしれません。独立した瞬間、あなたは「〇〇会社のベテラン」ではなく、「無名の個人事業主」になります。過去の成功体験が、新しい市場や技術への適応を妨げる「足かせ」になることは珍しくありません。「昔はこうやれば上手くいった」というプライドが、変化への対応を遅らせ、命取りになるのです。

神話2:「幅広い人脈」は幻想だった?

会社員時代に築いた人脈も、大きな強みだと思われがちです。しかし、その人脈もまた、会社の看板の上になりたっていた砂上の楼閣かもしれません。

  • 「あなた」と付き合っていたのか、「あなたの会社」と付き合っていたのか
    肩書がなくなった途端、あれほど親しくしていた取引先が、急によそよそしくなる。これは非常によくある話です。義理や付き合いで最初の1、2件は仕事をもらえるかもしれません。しかし、ビジネスは継続しなければ意味がありません。会社の看板がなくても、あなた個人の実力や人間性に惹かれていた人脈だけが、本当の財産なのです。

神話3:「潤沢な資金(退職金)」が最も危険な罠

シニア起業の最大のメリットとして語られる自己資金。しかし、これが最大のデメリットであり、最も注意すべき点です。

  • 退職金は「事業資金」ではなく「老後の命綱」
    若者であれば、起業に失敗しても再就職してやり直すチャンスがあります。しかし、シニアにはそのチャンスがほとんどありません。事業に失敗して退職金を失うことは、老後破産に直結します。
  • どんぶり勘定が破滅を招く
    「事業のためのお金」と「生活のためのお金」を明確に分けず、退職金が入った口座から安易に運転資金を引き出してしまう。この資金管理の甘さが、気づいた時には取り返しがつかない事態を招きます。退職金は、絶対に「聖域(サンクチュアリ)」として守り抜かなければならない最後の砦なのです。

シニアだからこそ直面する「7つの壁」

前述の3つの神話に加え、シニアには特有の乗り越えなければならない壁が存在します。これらは、若い起業家とは質の異なる、深刻な問題となる可能性があります。

  • 健康・体力の壁
    起業は、あなたが想像している以上に過酷な肉体労働・精神労働です。休みなく働き、常に資金繰りや顧客対応に頭を悩ませる日々。気力はあっても、体がついていかない現実に直面します。事業が軌道に乗り始めた頃に、体調を崩して廃業に追い込まれるケースも少なくありません。
  • IT・デジタルの壁
    「パソコンは苦手で…」では、今の時代、ビジネスは100%成り立ちません。ホームページやSNSでの集客、キャッシュレス決済への対応、顧客管理、会計ソフトの利用、そしてウイルス対策などのセキュリティ知識。これらは「できれば良い」スキルではなく、「できなければ話にならない」必須事項なのです。
  • 情報リテラシーの壁
    インターネット上には、有益な情報と同じくらい、あなたを騙そうとする情報が溢れています。どの情報が正しくて、どの情報が怪しいのかを見極める力(情報リテラシー)が低いと、悪質な業者や詐欺的な情報商材のカモにされてしまいます。
  • プライドの壁
    長年の社会人経験は、時に「素直さ」を失わせます。自分より若い専門家や、年下の顧客からのアドバイスを「若造が何を言うか」と聞き入れられない。この「教えてもらう」という謙虚な姿勢になれないことが、あなたの成長を止め、ビジネスを時代遅れにしていきます。
  • 知識・スキルの偏りの壁
    例えば、長年「営業」一筋でやってきた人が、起業した途端、営業だけでなく「経理・財務・法務・マーケティング・人事」など、会社の全てを一人でこなさなければならなくなります。特定の分野での専門性が高いほど、経営に必要な知識がゼロに近いという現実に愕然とすることでしょう。
  • 新規顧客獲得の壁
    会社の看板も、飛び込み営業が通用した時代も、もうありません。現代の顧客獲得の主戦場はインターネットです。Webマーケティングの知識なしに、ゼロから新しいお客様を見つけ出すことは至難の業です。
  • 事業継続の壁
    「この事業を、あと何年続けられるだろうか?」という不安は常に付きまといます。体力的な衰えだけでなく、万が一自分が倒れた時に事業を引き継いでくれる後継者がいなければ、せっかく育てたビジネスも一代で終わってしまいます。

シニアを狙う甘い罠 – 失敗事例に学ぶ現実

言葉だけでは、その恐ろしさは伝わりにくいかもしれません。

ここでは、シニアが陥りがちな具体的な失敗パターンを見ていきましょう。これらは、決して他人事ではありません。

ケース1:安易なフランチャイズ加盟の末路

「本部がノウハウを提供してくれるから安心」「未経験でも始められる」といった甘い言葉に誘われて、退職金をはたいてコンビニや飲食店、学習塾などのフランチャイズに加盟。

しかし、現実は「本部に任せておけば儲かる」ほど甘くはありません。

高いロイヤリティを毎月支払わされ、本部のサポートは名ばかり。結局は、経営者としての自身の才覚や努力がなければ、本部に搾取されるだけで終わってしまいます。

事実、フランチャイズで開業した事業の3割は5年以内に廃業しているというデータもあります。「簡単」という言葉の裏には、それ相応のリスクが隠れているのです。

ケース2:「誰でも簡単!」怪しい起業セミナー・情報商材の闇

「スマホ1台で月収100万円!」「あなたも1年で成功者になれる!」 SNSや広告で、こんな魅力的な謳い文句を見たことはありませんか?

これらは、情報リテラシーが低いシニアを狙った悪質なセミナーや高額な情報商材である可能性が非常に高いです。

不安を巧みに煽り、「このセミナーを受けなければ成功できない」と思い込ませ、何十万、何百万という契約を結ばせるのが彼らの手口です。

失うのは大金だけではありません。貴重な時間と、「自分は騙された」という自信の喪失も伴います。

ケース3:「経験が活かせる」コンサルタント独立の現実

「自分の専門知識を活かして、コンサルタントとして独立しよう」 これはシニア起業の王道の一つに見えます。しかし、ここにも大きな落とし穴があります。

いざ独立してみると、会社の看板を失った自分に、誰も見向きもしてくれない。営業経験が全くなく、どうやって仕事を取ればいいのかわからない。誰にも相談できず、孤独の中で時間だけが過ぎていき、気づけば貯金も底をつき、静かに廃業していく…。

「専門知識があること」と「ビジネスとして稼げること」は、全く別のスキルなのです。

それでも挑戦したいあなたへ – 唯一の道は「専門家を味方につけて小さく始める」こと

ここまで、シニア起業の厳しい現実をこれでもかというほどお伝えしてきました。 その上で、それでも「挑戦したい」という情熱が消えないあなたへ。

もし本気でやるのであれば、リスクを限りなくゼロに近づけるための「鉄則」があります。これは起業の推奨ではなく、あくまで人生を守るための「防衛策」です。

大前提:老後の資金には絶対に手を出すな!

これが最も重要な鉄則です。事業に投じるお金は、必ず「無くなっても生活に影響が出ない余剰資金」の範囲に限定してください。目安として、最低でも3年分の生活費は、事業資金とは別の口座に「聖域」として確保しておくべきです。

シニアならではのスモールビジネスという選択肢

大きな借金をしたり、店舗を構えたりするようなハイリスクな起業は絶対に避けるべきです。狙うべきは、小さく始められるスモールビジネスです。

  • 店舗を持たない
    在宅でできるオンラインのコンサルタント、Webライター、ネットショップ運営、オンライン教室の講師など、家賃などの固定費がかからないビジネスを選びましょう。
    ※オンラインビジネスの専門家の力を借りましょう
  • 経験を「商品」にする
    あなたが長年培ってきた専門知識やスキルそのものを商品にしましょう。特定の業界向けのコンサルティング、企業研修の講師、若手経営者向けの顧問などが考えられます。
    ※専門知識やスキルをビジネスに変える専門家の力を借りましょう
  • 趣味や特技を活かす
    ハンドメイド作品をネットで販売する、地域の方向けに自宅で小規模な教室を開くなど、楽しみながら始められることも重要です。
    ※集客の専門家の力を借りましょう

独りでは戦わない。信頼できる「専門家」を味方につけることが大事

これまで指摘してきたように、あなたには「IT・デジタルの壁」「知識・スキルの偏りの壁」「新規顧客獲得の壁」などがあり、自分に足りないスキルを補ってくれる専門家の協力が不可欠です。

よろしければ、当社のソエルコトの経営パートナーサービスもご検討ください。ソエルコトは、一人会社・小さな会社の社長さんのための経営パートナーサービスで、Webサイトの制作や運営はもちろん、集客の仕組みづくり、AIの導入・積極活用についても支援しています。

まとめ:起業は「目的」ではなく、あくまで「手段」です

最後に、もう一度冷静に考えてみてください。 あなたが本当に求めているものは、「起業すること」そのものでしょうか?

もし、あなたが求めているものが「生きがい」や「社会とのつながり」なのであれば、その手段は起業だけではありません。

地域でのボランティア活動、趣味のサークル、NPO法人への参加、あるいは経験を活かせる企業への再就職という選択肢もあります。

もし、あなたが経済的な不安を解消したいのであれば、リスクの高い起業ではなく、まずは支出を見直し、安定したアルバイトなどから始める方が賢明かもしれません。

起業は、人生を豊かにする素晴らしい選択肢の一つです。しかし、それはあくまで数ある選択肢の一つに過ぎません。

どうか、世間のキラキラした言葉に惑わされず、ご自身の人生にとって何が本当に大切なのかを、もう一度じっくりと考えてみてください。

その冷静な判断こそが、あなたの豊かなセカンドライフを守る最大の武器になるはずです。

そして、それでも起業したい!とお考えの場合は、あなたに不足している力やあなたに必要な力をそっと力添えする「ソエルコト」のサービスをご検討ください。

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