金の卵はどこ?起業のアイデアの見つけ方:スタートアップ編

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2006年に合同会社アルクコト設立。2008年に株式会社アルクコトに組織変更。現在は一人会社・一人社長で、様々なスモールビジネスを展開中。

自身の20年間で築き上げたマーケティングスキル・Web制作スキル、AIスキルに加え、一流マーケターや一流コンサルタントのノウハウ・成功例・幅広い知見で構築した第二の頭脳(セカンドブレイン)を活用していることが強み。

「集客の仕組み化」と「話を聴くこと」が得意で、一人会社の社長さん・小さな会社の社長さんの支援実績も豊富。

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あなたの世界を変える「金の卵」を発掘する冒険へようこそ

スタートアップの起業アイデアを探す旅へ、ようこそ。

この旅は、退屈なビジネススクールの課題ではありません。まだ見ぬ大陸を目指す、スリリングな冒険です。以前の「スモールビジネス編」では、すでに存在する確かな地図を手に、いかに効率よく目的地にたどり着くかを解説しました。

しかし、スタートアップの航海は全く異なります。ここでは、まだ誰も描いたことのない、自分だけの宝の地図を創り出すことが求められます。

Airbnbの創業者たちが、見知らぬ他人の家の空き部屋に泊まるという起業アイデアを思いついたとき、多くの人々はそれを奇妙で、ニッチすぎると考えました。しかし、彼らは既存のホテル業界の常識の外に、巨大な未開拓市場が眠っていることを見抜いていたのです。

これこそが、スタートアップの起業アイデア探しの本質です。確実性を求めるのではなく、可能性に賭けること。多くの人が見過ごす「不便」や「違和感」の中に、世界を変えるほどの価値が隠されていることに気づくことです。

この冒険に乗り出すには、まずコンパスの調整が必要になります。つまり、マインドセットの転換です。

スモールビジネスが狙うのは、顧客がすでに「これが欲しい」と認識している「顕在ニーズ」です。一方、スタートアップが挑むのは、顧客自身さえまだ気づいていない「潜在ニーズ」なのです。

この違いを理解することが、すべての始まりとなります。確実な答えがない曖昧な世界で、他の誰にも見えていない未来の需要を信じるビジョンが求められます。

この記事は、そのビジョンを見つけるための航海術を授けるガイドブックです。

個人の経験という名の故郷の港から出発し、世の中の非効率という名の荒波を乗り越え、未来予測という名の星を頼りに、まだ見ぬ新大陸、すなわち革新的なビジネスアイデアを発見するための、あらゆる羅針盤と海図を提供します。

さあ、あなたの世界を変える「金の卵」を発掘する冒険を始めましょう。

コンパスの調整:スタートアップの起業アイデアとビジネスアイデアを分けるもの

宝探しを始める前に、探している宝物がどのようなものかを知らなくてはなりません。私たちが追い求めるのは、単なる「儲かる話」ではないのです。

急成長と市場の変革を運命づけられた、特別なDNAを持つ「スタートアップの起業アイデア」です。このDNAを理解することが、航海の成否を分けます。

スタートアップのDNA:成長と変革への渇望

スタートアップの起業アイデアを定義づける核心的な要素は、以下の通りです。

  • イノベーションと新しいビジネスモデル
    スタートアップは、既存の市場を破壊したり、全く新しい市場を創造したりする革新的な起業アイデアやビジネスモデルを核とします。単に良い商品を提供するのではなく、業界のルールそのものを変えてしまうような挑戦です。
  • 急成長への志向
    スモールビジネスが着実で安定した成長を目指すのに対し、スタートアップは短期間での非連続的、指数関数的な成長を宿命づけられています。初期には赤字を掘ってでも、一気に市場を獲りに行く「Jカーブ」と呼ばれる成長曲線を描くことが多いです。
  • スケーラビリティ
    この急成長を可能にするのが「スケーラビリティ」です。これは、売上が増加しても、それに比例してコストが増加しない事業構造を指します。例えば、ソフトウェアやクラウドサービスは、ユーザーが10人から100万人に増えても、追加コストはごくわずかです。この構造こそが、ベンチャーキャピタル(VC)が投資する際の最も重要な判断基準の一つとなります。
  • 潜在ニーズへの挑戦
    前述の通り、スタートアップはしばしば、顧客がまだ明確に言葉にできない「潜在ニーズ」をターゲットにします。だからこそ、優れたスタートアップの起業アイデアは、最初は理解されにくいのです。「そんなもの、誰が使うんだ?」という疑問を乗り越えた先に、巨大な市場が広がっています。
  • 明確な出口戦略(Exit)
    スタートアップは創業時から、IPO(株式公開)やM&A(企業売却)といった「出口」を明確に意識しています。これは、投資家に対して大きなリターンを返すという約束であり、事業のライフサイクル全体を規定します。
  • 資金調達モデル
    上記の特性から、スタートアップの資金調調達は、ハイリスク・ハイリターンを許容するVCやエンジェル投資家からの「リスクマネー」が中心となります。一方、スモールビジネスは自己資金や銀行融資といった、より確実性の高い資金で運営されます。

これらの要素は、互いに密接に結びついています。革新的な起業アイデアだからこそ巨大な市場(TAM)を狙え、スケーラビリティがあるからこそ急成長が可能になり、その急成長ポテンシャルがあるからこそVCから資金を調達でき、最終的に大きなExitを目指せるのです。この一連の因果関係を理解することが不可欠です。

多くの起業家が犯す過ちは、スモールビジネスのDNAを持つ起業アイデアで、スタートアップの航路(VCからの資金調達など)を進もうとすることです。それは、釣り船で太平洋横断に挑むようなものです。

スタートアップ vs. スモールビジネス リトマス試験紙

自身の起業アイデアがどちらの航路に適しているかを見極めるために、以下の比較表を活用してください。これは、起業アイデアのDNAを鑑定するためのリトマス試験紙です。

アイデアの特性スタートアップのプロファイルスモールビジネスのプロファイル
コアミッション新市場の創造/既存市場の破壊既存市場への確実なサービス提供
ターゲットニーズ潜在的・未認知のニーズ (潜在ニーズ) 既存・既知のニーズ (顕在ニーズ)
成長曲線Jカーブ(初期の損失を許容し、急成長を目指す)線形的で、早期からの黒字化を目指す成長
スケーラビリティ高い(テクノロジー活用、低い限界費用)低い(労働力や物理的資産に依存)
市場規模 (TAM)リスクを正当化できる巨大な市場が必要地域やニッチな市場でも成立可能
主な資金調達ベンチャーキャピタル、エンジェル投資家自己資金、銀行融資、親族・知人
最終目標IPO / M&A (Exit)長期的な収益性とオーナーの安定収入

この試験紙で青(スモールビジネス)と出た起業アイデアを、無理に赤(スタートアップ)に変えようとする必要はありません。どちらが優れているという話ではないのです。

重要なのは、自分の船の設計図を正確に理解し、それに最も適した航海術を選ぶことなのです。

X印は足元に:自分の裏庭から黄金を掘り当てる

最もパワフルなスタートアップの起業アイデアは、しばしば創業者自身の深い個人的な洞察から生まれます。

遠い海の向こうに宝を探しに行く前に、まずは自分の足元、つまり自身の経験という裏庭を掘り起こすことから始めましょう。

そこには、他の誰にも真似できない、あなただけの「不公平な優位性」が眠っています。

「個人的なペインポイント」という金鉱脈

偉大な起業アイデアは、「これは壊れている」「もっと良い方法があるはずだ」という、ささいな不満から始まることが多いです。日常の小さなイライラや「なんかちょっと違う」という違和感は、ほとんどの人が無視してしまいますが、起業家にとっては宝の山なのです。

今日から「フラストレーション・ジャーナル」をつけてみることを勧めます。仕事や生活の中で感じた不便、非効率、理不尽な体験をすべて記録するのです。

「なぜ、この作業はこんなに面倒なんだ?」「どうして、このサービスは私のことを分かってくれないんだ?」その一つ一つの問いが、新しいビジネスの種となります。

「専門家の不公平な優位性」を武器にする

長年勤めた業界や専門分野で培った知識は、他人が決して持ち得ない強力な武器です。あなたはその業界の常識、隠れた非効率、顧客が本当に困っていることを、内部の人間として知っています。それは、外部のコンサルタントが何ヶ月かけても得られない、生々しく、価値ある情報なのです。

例えば、医療従事者であれば、現場のワークフローの非効率さや、患者とのコミュニケーションにおける課題を知っているでしょう。金融の専門家なら、既存の金融商品が満たせていないニッチなニーズを把握しているかもしれません。

その深いドメイン知識から生まれる起業アイデアは、表面的な模倣が困難な、非常に防御力の高い事業となりうるのです。

趣味から高成長ビジネスへ:情熱の力

趣味や熱中していることは、スタートアップの起業アイデアの強力な源泉となり得ます。なぜなら、そこには成功に不可欠な二つの要素が揃っているからです。

第一に、圧倒的なモチベーション。スタートアップの道は困難の連続ですが、自分が心から愛する分野であれば、その情熱が困難を乗り越える燃料となります。

第二に、深いユーザー理解。あなた自身がその趣味のヘビーユーザーであれば、他の誰よりもユーザーの気持ちやニーズを深く理解しています。あなたは、市場調査の対象ではなく、市場そのものなのです。

写真、料理、ハンドメイド、ゲーム実況など、あらゆる趣味がビジネスに変わる可能性を秘めています。

ケーススタディ:グリー株式会社の誕生

この「趣味からの起業」を体現したのが、グリー株式会社の創業者、田中良和氏です。彼は楽天に勤務していた当時、趣味としてSNS「GREE」を個人で開発しました。

勤務時間外や休日を使ってサービスを成長させ、ユーザーが急増。本業との両立が困難になったタイミングで独立を決意し、GREEを国内最大級のSNSへと育て上げました。この事例は、個人的な興味から始まったプロジェクトが、いかに巨大な市場機会を発見し、大企業へと成長しうるかを見事に示しています。

これらのアプローチに共通するのは、起業アイデアが創業者自身の文脈から生まれているという点です。スタートアップ界隈でよく語られる「プロダクト・マーケット・フィット(PMF)」(製品が市場に適合している状態) を達成する以前に、実はもっと根源的な適合が存在します。それが「ファウンダー・マーケット・フィット」です。

これは、創業者自身がその市場の課題を解決するのに、個人的な経歴や情熱、専門性によって、他の誰よりもユニークに適している状態を指します。

起業アイデア探しとは、単に良い起業アイデアを見つけることではありません。あなたにとって、運命的とも言えるほど相性の良い起業アイデアを見つけ出すプロセスなのです。

第3章:探偵のハンドブック:世界に隠された手がかりを発見する

自分の内なる世界を探求したら、次は探偵の帽子をかぶり、虫眼鏡を手に、外の世界に隠された手がかりを探しに行きましょう。

優れた起業家は、日常風景の中に、他の人々が見過ごしてしまうビジネスチャンスの痕跡を見つけ出す鋭い観察眼を持っています。

この章では、そのための体系的な調査ツールキットを提供します。

「構造的な非効率」をハントする

破壊的なビジネスチャンスは、しばしば古く、非効率な業界に眠っています。価格設定が不透明であったり、紙や電話といったアナログなやり取りに依存していたり、顧客体験が著しく悪かったりする市場は、テクノロジーによって変革されるのを待っている宝の島です。

ケーススタディ:ラクスルとCADDiの革命

ラクスルやCADDiは、印刷や金属加工といった産業そのものを発明したわけではありません。彼らが発見したのは、これらのサービスを「発注するプロセス」に存在する巨大な非効率性でした。

発注者は最適な印刷会社や加工工場を見つけるために何社にも見積もりを取り、価格と納期を比較するという煩雑な作業を強いられていました。一方で、受注側である工場は、稼働していない時間(空き稼働)を埋めたいというニーズを抱えていました。

ラクスルとCADDiは、テクノロジーを用いてこの需給をマッチングさせ、価格とプロセスを透明化するプラットフォームを構築しました。彼らは業界の「構造的な非効率」という名の怪物を退治し、そこに眠っていた莫大な価値を解放したのです。

デジタル盗み聞き術(体系的セレンディピティ)

インターネットは、人々の不満や願望が流れ着く巨大な砂浜です。何気ないネットサーフィンを、意図的な起業アイデア発掘活動に変える方法を身につけましょう。

  • ECサイトのレビュー分析
    Amazonや楽天市場、アプリストアのレビュー欄は、顧客の生の声が詰まった金鉱です。特に注目すべきは、5つ星ではなく、2つ星や3つ星のレビューです。「製品は素晴らしい、でも〇〇の機能があれば完璧なのに」「この点が使いにくい」といったコメントは、顧客が自ら差し出してくれている改善案であり、新しい製品のアイデアそのものです。ドン・キホーテが顧客からの「ダメ出し」を積極的に商品開発に活かす「ダメ出しの殿堂」という取り組みは、この手法を組織的に実践した好例と言えます。
  • Q&Aサイトと専門フォーラム
    Yahoo!知恵袋やQuoraのようなQ&Aサイトでは、人々が何に困り、どのような解決策を探しているかが赤裸々に語られています。質問者が抱える問題と、それに対する回答(しばしば不十分なものも多い)を分析することで、市場に存在する明確なギャップを発見できます。
  • ニッチなオンラインコミュニティ
    Redditの専門サブレディット(例えば、プログラミング関連の r/programming)やHacker Newsのようなコミュニティは、特定の分野の専門家や熱狂的なユーザーが集まる場所です。そこで交わされる「現在のツールに関する最大のペインポイント(悩み)」についての議論は、非常に質が高く、具体的な問題点を浮き彫りにします。
  • SNSのトレンド分析
    X (旧Twitter)やInstagramなどのSNSは、世の中のトレンドや人々の関心事をリアルタイムで把握するための強力なツールです。SNS分析ツールを使えば、特定のキーワードに関する投稿の感情(ポジティブ/ネガティブ)を分析したり、競合他社の評判を調査したりできます。これにより、消費者の本音を掴み、新たなニーズを発見する手がかりを得られます。

市場をタイムトラベルする(地理的アービトラージ)

アメリカやヨーロッパなど、スタートアップのエコシステムが成熟している市場で成功しているビジネスモデルは、数年後の日本市場で成功する可能性を秘めています。

海外のテック系ニュースサイトをチェックしたり、現地を訪れたりすることで、日本未上陸のユニークなサービスを発見できます。

AIを活用したパーソナライズド医療、ユニークなD2Cブランド、新しいサブスクリプションモデルなど、海外で既に証明された起業アイデアを日本の文脈に合わせてローカライズすることは、成功確率の高い戦略の一つです。

これらの探偵術を実践すると、一つの共通点が見えてきます。価値あるビジネスチャンスは、多くの場合、コミュニケーションや取引における「摩擦」の中に存在するということです。人と人、企業と企業、あるいは人とその目的との間にある障壁、非効率、不透明性。

スタートアップの役割は、テクノロジーという名の橋を架け、その摩擦を取り除くことです。あなたの探偵としての仕事は、世の中のどこに最も大きな「摩擦」が存在するのかを見つけ出すことなのです。

錬金術師の実験室:創造的フレームワークで起業アイデアを鍛える

ここまでは観察と発見のフェーズでした。

この章では、いよいよ創造のフェーズ、いわば「錬金術師の実験室」へと足を踏み入れます。偉大な起業アイデアは、単に見つけられるだけでなく、既存の要素を組み合わせ、反転させ、再構築することによって「発明」されることもあります。頭を柔軟にし、常識の枠を外すための思考実験を始めましょう。

分解と再構築の魔法:「アンバンドリング」と「リバンドリング」

市場の進化には、強力なパターンが存在します。それが「アンバンドリング(分解)」と「リバンドリング(再構築)」のサイクルです。

  • アンバンドリング(分解)
    かつて、新聞やCraigslistのようなプラットフォームは、ニュース、求人、不動産、出会いなど、様々なサービスを一つにまとめた「バンドル(束)」として提供されていました。しかし、巨大なプラットフォームは、個々のサービスにおいては専門性に欠け、中途半端な体験しか提供できなくなります。ここにチャンスが生まれます。スタートアップは、その中の一つの領域(バーティカル)を切り出し(アンバンドルし)、その領域に特化した「10倍良い」体験を提供することで、巨大プラットフォームから市場を奪うことができるのです。例えば、Craigslistの不動産カテゴリはZillowに、出会い系はTinderに、それぞれ専門サービスとしてアンバンドルされていきました。
  • リバンドリング(再構築)
    市場が専門的なツール(ポイントソリューション)で溢れかえると、今度は「それら全てを管理するのが面倒だ」という新たな問題が生まれます。そこで次のチャンスが訪れます。それが「リバンドリング」です。優れた専門ツール群を統合し、シームレスな体験を提供する新しいプラットフォームが価値を持つようになるのです。例えば、HubSpotはマーケティング、セールス、カスタマーサービスのツールを一つのプラットフォームに統合し、顧客に一貫した体験を提供することで成功しました。

この市場の分解と再構築という大きな波のリズムを理解すれば、今がどちらのフェーズにあるのかを見極め、戦略的に自らを位置づけることができます。

予期せぬマッシュアップの芸術

イノベーションは、しばしば無関係に見える二つの要素の「掛け合わせ」から生まれます 67。この錬金術を成功させる鍵は、意外な組み合わせが生み出す新しい価値を発見することです。

  • ケーススタディ:野菜寿司
    「寿司」という伝統的な食文化と、「野菜」というヘルシー志向やベジタリアンといった現代的なニーズを掛け合わせました。これにより、宗教上の理由で魚介を食べられない人々や、健康を気にする女性といった新しい顧客層を獲得しただけでなく、ケーキのようなカラフルな見た目がSNSで映えるという新たな価値も生み出しました。
  • ケーススタディ:コインランドリー × ヘアサロン
    一見無関係な二つのサービスですが、これらは「待ち時間を有効活用したい」という共通の顧客課題を解決します。洗濯が終わるまでの退屈な時間を、ヘアカットという生産的な時間に変えることで、顧客に新たな価値を提供しました。

常識を覆す「逆転の発想」

行き詰まったときは、前提を疑い、物事を逆さまに考えてみましょう。制約やピンチは、視点を変えればチャンスの宝庫となります。

  • ケーススタディ:すみだ水族館のチンアナゴ
    コロナ禍で「来館者が水族館に来られない」というピンチに直面しました。通常の思考では「どうやってオンラインで生き物を見せるか」となります。しかし、彼らは発想を逆転させました。「来館者が見に来られないなら、チンアナゴが来館者を見ればいい」。こうして生まれたのが、ビデオ通話でチンアナゴに顔を見せる「緊急開催!チンアナゴ顔見せ祭り!」です。これは、「見る」と「見られる」という立場を逆転させたことで、社会現象を巻き起こすほどの独創的なイベントとなりました。
  • ケーススタディ:落ちないリンゴ
    台風で収穫前のリンゴのほとんどが落ちてしまったという絶望的な状況。農家は、その中で「落ちなかったリンゴ」に着目しました。ピンチの象徴であったはずのリンゴを、「どんな困難にも落ちない」という縁起物として受験生向けに販売し、大成功を収めました。

10倍思考(ムーンショット・シンキング)

Googleが社内で推奨する「10X思考」は、現状を10%改善するのではなく、「10倍良くする」ことを目指す考え方です。

10%の改善なら、既存のプロセスの延長線上で考えがちです。しかし、10倍を目指すと決めた瞬間、既存のやり方をすべて捨て、全く新しいアプローチをゼロから考えざるを得なくなります。

それは、より速い馬車を作ろうとするのではなく、自動車を発明しようとする思考の飛躍です。この強制的な思考の枠組みの破壊こそが、真のイノベーション、すなわち「破壊的イノベーション」を生み出す源泉となるのです。

これらのフレームワークは、単なる頭の体操ではありません。市場の進化の根底にあるダイナミズムを理解し、自らの手で未来のビジネスを錬成するための、実践的な錬金術なのです。

未来を覗き込む:地平線の先にある起業アイデアを見つける

最も野心的な起業家は、今日の問題を解決するだけではありません。彼らは明日の世界を創造するためにビジネスを立ち上げます。

この最終章では、まだ黎明期にある、地平線の先に見える機会を発見するための高度な航海術を紹介します。未来の波に乗り遅れるのではなく、波そのものを起こすための方法です。

賢者の羅針盤:VCのトレンドを追う

ベンチャーキャピタル(VC)は、未来に賭けるプロフェッショナルです。

Andreessen Horowitz (a16z)やSequoia CapitalといったトップティアのVCが、どの領域に資金を投じているかを分析することは、今後数年間でどの技術や市場が重要になるかを知るための強力な先行指標となります。

彼らのポートフォリオやブログ記事を読み解けば、AI、FinTech、バイオテクノロジー、気候テックといった、次の巨大市場の輪郭が見えてきます。

眠れる巨人を呼び覚ます:ディープテックとオープンソース

イノベーションの源泉は、時にアカデミアや開発者コミュニティの中にひっそりと眠っています。

  • 大学に眠る技術シーズ
    全国の大学や研究機関では、世界を変える可能性を秘めた最先端の研究(技術シーズ)が日々生まれています。しかし、多くは論文として発表されるだけで、事業化されずに眠っています。これらの技術を商業化するために、大学と企業を繋ぐ技術移転機関(TLO)が存在します。創業者にとって、大学と連携し、画期的な科学技術を核としたディープテック・スタートアップを立ち上げることは、非常に大きなチャンスなのです。
  • オープンソースのペインポイント: オープンソースソフトウェア(OSS)の世界は、優れた開発者たちが情熱を注いで素晴らしいツールを開発しています。しかし、その多くは持続的なメンテナンス、専門的なサポート、安定した資金繰りに課題を抱えています。ここに、「コマーシャル・オープンソース」というビジネスモデルの機会があります。人気のOSSプロジェクトを基盤に、企業向けのホスティング、サポート、高度な機能などを提供するビジネスです。Red HatやGitLabがその成功例です。

SFプロトタイピングで未来を創造する

これは、究極の「未来志向」の起業アイデア発想法です。問題から始めるのではなく、あるべき未来のビジョンから始めます。

このアプローチは、まず「もし〇〇が実現したら、世界はどれほど良くなるだろうか?」という壮大なビジョンを描くことから始まります。例えば、「がんを撲滅する」「すべての製造業を国内に戻す」といった目標です。

そして、その未来から現在を振り返る「バックキャスティング」という手法を用いて、その未来を実現するために、今、どのような技術、サービス、企業が足りないのかを逆算して考えるのです。

具体的なインスピレーション:Y Combinatorの「Requests for Startups (RFS)」

この未来志向の起業アイデア探しの最も優れた実例が、世界最高のスタートアップアクセラレーターであるY Combinator (YC) が公開している「Requests for Startups (RFS)」です。

これは、YCが「このようなスタートアップに投資したい」と考える、未来を変えるための具体的な事業アイデアのリストなのです。

近年のRFSには、以下のようなテーマが含まれています:

  • 機械学習のロボティクスへの応用
  • 新しい防衛技術
  • がんを撲滅する方法
  • ステーブルコイン・ファイナンス
  • 生物システムのための基盤モデル

これらのテーマは、単なるトレンド予測ではありません。YCが「共に創造したい未来」の設計図なのです。

この章で紹介した手法に共通するのは、受動的ではなく能動的な姿勢です。

大学の革新的な新素材を事業化する起業家は、市場のニーズに応えているだけではありません。彼らは、これまで存在しなかった新しい製品や市場が生まれる「可能性」そのものを創造しているのです。

YCのRFSに挑戦する起業家は、望ましい未来の一部を積極的に建設しています。これは、起業家という存在を、単なる問題解決者から、未来の設計者へと昇華させる、力強い呼びかけに他なりません。

結論:起業アイデアは号砲にすぎない

この長い航海の末に、心躍るような起業アイデアの原石を発見したかもしれません。その瞬間は、間違いなくスリリングなものです。しかし、忘れてはなりません。それはゴールテープではないのです。レースの始まりを告げる号砲です。

本当の冒険はここから始まります。その起業アイデアが本当に価値あるものなのかを検証するプロセスです。机上の空論で終わらせないために、建物から出て、未来の顧客となる可能性のある人々と対話しなければなりません。

彼らが本当にその課題に悩み、あなたの解決策に対して、貴重な時間やお金を払ってくれるのかを確かめる必要があります。

最初から完璧な起業アイデアなど存在しません。最初の起業アイデアは、検証されるべき仮説であり、盲目的に信じるべき神託ではないのです。

顧客との対話を通じて学び、ピボット(方向転換)を恐れず、粘り強く改善を続けること。それこそが、起業アイデアを偉大な事業へと育てる唯一の道です。

神話のような「完璧な起業アイデア」が降ってくるのを待つのはもうやめましょう。このガイドブックを通じて見つけ出した、最も心惹かれる一つのコンセプトを手に取り、今日、それを検証するための小さな一歩を踏み出してください。

冒険は、まだ始まったばかりです。

もう、一人で戦わない。社長のあなたに、事業成長を共に創る経営パートナーを。

ソエルコトは、一人会社・小さな会社の社長さんのための経営パートナーサービスです。

社長であるあなたのすぐ隣に、「メンター」として心の拠り所となり、「軍師」として共に戦略を練り、「専門家」として実務を遂行する、三位一体のパートナーを添えることができます。AIの導入、積極活用についても支援します。

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