会社員の賢い起業① 失業保険を受給してから起業する

一人社長ブログ
この記事の監修者・著者

2006年に合同会社を設立。2008年に株式会社へ組織変更。社員2人〜4人の小さな会社を5年経営後、一人会社・一人社長となり15年。

WebとAIを活用して様々なスモールビジネスを展開中。集客の仕組み化が得意。一人会社・小さな会社の社長さんの支援実績も豊富で、日本全国にクライアントがいます。

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【重要】本記事について
本記事の内容は2025年10月時点の雇用保険制度に基づいています。制度は改正される可能性があるため、実際の手続きを行う際は、必ずハローワークで最新の情報をご確認ください。また、個別の状況により取り扱いが異なる場合がありますので、詳細は専門家やハローワークの窓口でご相談されることをお勧めします。

はじめに:会社員+失業保険の二刀流で、リスクゼロの起業を目指そう!

「いつかは自分のビジネスを立ち上げたい!」

そんな夢を抱きつつも、安定した会社員の給料を手放すのは怖い…と感じていませんか?起業には大きな可能性がありますが、収入が不安定になるリスクはつきものです。

でも、もしそのリスクを限りなくゼロに近づける方法があるとしたら、知りたくありませんか?

この記事でご紹介する戦略のキホンは、「会社員」という安定した身分と、「雇用保険(いわゆる失業保険)」という公的な制度。この2つの強力なセーフティネットを最大限に活用する、まさに “二刀流” の考え方です。

これは、ただ制度の恩恵を待つのではなく、各ステップで必要な条件をしっかり理解し、計画的に行動することで、起業への移行期間を経済的な不安なく乗り切るための、賢い戦略なのです。

この戦略は、大きく3つのフェーズに分かれています。

  • フェーズ I:準備フェーズ
    会社員として安定収入を得ながら、起業の土台をガッチリ固める期間。
  • フェーズ II:移行フェーズ
    退職後、失業保険をもらいながら、生活の心配なく最終準備を整える期間。
  • フェーズ III:スタート&資金確保フェーズ
    いよいよ事業を開始!さらに「再就職手当」を一括で受け取り、スタートダッシュの資金を手に入れる期間。

このプロセスは、決して裏技ではありません。各フェーズのルールを守り、正しい順番で進めることが成功の絶対条件です。

たとえば、失業保険をもらっている間に開業届を出してしまうと、その時点でお金はストップしてしまいます。一方で、まとまった一時金である「再就職手当」をもらうには、決められたタイミングで事業を始める必要があります。

この記事を読めば、その複雑な手続きの全体像が分かり、リスクを避けながら着実に起業家としての第一歩を踏み出すための、具体的で実践的な方法が分かります。

準備フェーズ:会社員のうちに、起業の土台を固めよう!

起業を目指すあなたにとって、会社員として安定した給料をもらっている今の時間は、最高の「準備期間」です。この時期の過ごし方が、のちの成功を大きく左右すると言っても過言ではありません。

1.会社員だからこそできる!最強の起業準備

会社員という立場は、起業準備において実は最強の武器になります。そのメリットを最大限に活かしましょう。

  • 経済的な安心感
    なんといっても最大のメリットは、毎月のお給料をもらいながら起業資金を貯められること。事業開始直後は売上が不安定になりがちですが、在職中にしっかり貯金しておくことで、この一番怖いリスクを避けることができます。
  • 「社会的信用」という武器
    会社員は、社会的信用が非常に高い状態です。この信用は、住宅ローンを組んだり、新しいクレジットカードを作ったりする際に絶大な効果を発揮します。起業してしまうと、事業が軌道に乗るまで金融機関の審査はとても厳しくなります。将来マイホームを考えているなら、会社員のうちにローンを組んでおくのが賢い選択です。
  • 会社の資産をフル活用
    今の会社にある人脈、業界の情報、研修制度なども、実はあなたにとって貴重な資産です。「会社の研修でスキルアップする」「仕事で出会った人と名刺交換しておく」といった行動が、将来のあなたのビジネスの顧客やパートナーにつながるかもしれません。

2.ただの準備じゃない!「事業の事前テスト」が成功のカギ

在職期間は、あなたのビジネスアイデアが本当にうまくいくか、最小限のリスクで試せる絶好のチャンス。安定収入があるからこそ、焦らずに市場調査や試作品づくり、未来のお客様候補へのヒアリングができます。

そしてこの「事前テスト」は、実はもう一つ、とても重要な意味を持ちます。

最終フェーズで解説する「再就職手当」を起業によってもらうには、ハローワークに「この事業は安定していて、1年以上続けられますよ」ということを客観的に証明しなくてはなりません。

ある体験談では、取引先との年間契約書のコピーを提出したことが、手当をもらえる決め手になったそうです。

こうした契約書や、事業の実現可能性を示す具体的な証拠は、経済的に余裕のある会社員のうちにこそ準備しやすいもの。つまり、この準備フェーズでの活動は、自分のビジネスのためだけでなく、最終的にまとまった公的資金(再就職手当)を手に入れるための「証拠資料づくり」でもあるのです。

この視点を持つだけで、準備へのモチベーションがぐっと上がりますよね。

3.やるべきことはコレ!在職中の起業準備ロードマップ

忙しい毎日の中で効率よく準備を進めるために、以下のステップで計画を立ててみましょう。

ステップ1:あなたのビジネスの「軸」を決めよう

まずは「なぜこの事業をやりたいのか」「誰にどんな価値を届けたいのか」という、ビジネスの根っこになる部分を言葉にしてみましょう。自分の得意なこと・苦手なことを分析し、ビジネスモデルを整理するフレームワークなどを使ってみるのもおすすめです。

ステップ2:ライバルと市場を徹底リサーチ!

平日の夜や週末を使って、あなたが参入したい市場の大きさや、お客様が本当に求めているものを調べ尽くしましょう。ライバルがどんなサービスをいくらで提供しているかを知ることで、あなたのビジネスだけのユニークな価値が見えてきます。

ステップ3:「事業計画書」を作ろう

事業計画書は、この戦略における最重要アイテムです。自分のためのメモではなく、銀行の担当者やハローワークの職員さんなど、第三者が見ても「これならイケる!」と納得してくれるような、客観的で分かりやすい資料を目指しましょう。

  • 書くべきこと
    事業の概要、なぜ始めたいのか、どんな商品・サービスを扱うのか、どうやって売るのか、市場の分析、お金の計画(収支・資金)など、ビジネスの全体像を盛り込みます。
  • 作成のコツ
    「いつ、どこで、誰が、誰に、なぜ、何を、どのように、いくらで」を意識して、具体的に書くのがポイント。専門用語はなるべく避け、図やグラフを入れると、ぐっと分かりやすくなります。

ステップ4:お金の計画を立て、資金調達も考えよう

事業を始めるのに必要な初期費用(PCやオフィスの契約費など)と、当面の運転資金(仕入れ代や広告費など)を細かくリストアップします。自己資金だけでは足りない場合は、どうやってお金を集めるかを考えましょう。

特におすすめなのが、政府系金融機関である日本政策金融公庫です。創業者にとても優しく、無担保・無保証人で、低い金利で長期間お金を借りられる可能性があります。

融資の審査では事業計画書のクオリティが非常に重視されるので、社会的信用が高い会社員のうちに、質の高い計画書を作って相談に行くのがベストです。

4.ここだけは押さえて!準備中の注意点とリスク管理

在職中の準備には、いくつか注意すべき点があります。

会社のルール(副業規定)は必ず守ろう

一番大切なのが、今勤めている会社の就業規則です。副業を禁止している会社もまだまだあります。準備活動が「副業」とみなされて、ペナルティを受けないように細心の注意を払いましょう。

具体的には、勤務時間中に準備をしない、会社のPCや情報を使わない、そして何より、準備段階では売上を発生させないことが鉄則です。

超重要!「副業」は退職前に完全にストップすべし

この戦略の根幹に関わる、とても大事なルールがあります。もしあなたが今、何らかの副業をしている場合、退職後も副業収入が継続していると、失業保険はもらえません

退職後も副業収入が続いていると、「失業者」ではなく「自営業者」と見なされてしまうからです。

最も安全なのは、退職前にその副業を完全にやめておくことです。退職前に事業を停止し、退職後は一切の収入がない状態にしておくことで、「失業状態」であることを明確に証明できます。

マイナンバー制度により税金の情報がハローワークと共有される仕組みがあるため、収入を隠し通すことはできません。もし収入を申告しないと「不正受給」と判断され、もらったお金を返さなければならないだけでなく、ペナルティが課されることもあります。

失業保険をもらう計画なら、退職日までに収入源は本業一本に絞っておきましょう。

無理は禁物!時間と健康の管理

本業と起業準備の両立は、想像以上に大変です。燃え尽きてしまわないように、現実的なスケジュールを立て、しっかり休むことも忘れないでくださいね。

ルールを理解しよう:雇用保険(失業保険)のキホン

この戦略を実行する上で、雇用保険制度はただのセーフティネットではありません。計画的に活用すべき「強力なツール」です。

その仕組みを正しく理解し、自分がいくら、どのくらいの期間もらえるのかを事前に知っておくことが、計画全体の成功率をぐっと高めます。

1.失業保険をもらうための2大原則

一般的に「失業保険」と呼ばれているものは、正式には雇用保険の「基本手当」と言います。その目的は、「働く意思と能力があるのに、仕事に就けない状態」にある人の生活を支え、安心して次の仕事を探せるようにすることです。

基本手当をもらうには、主に次の2つの条件をクリアする必要があります。

  • 条件1:雇用保険に入っていた期間
    自己都合で会社を辞めた場合、原則として辞める前の2年間に、雇用保険に入っていた期間が合計で12ヶ月以上あることが必要です。ここで言う「1ヶ月」とは、給料の支払い対象となった日数が11日以上ある月のことです。
  • 条件2:失業の状態であること
    ハローワークに行って「仕事を探しています」と申し込み、いつでも働ける状態なのに、仕事が見つからない状態であることが求められます。起業準備中であっても、この「仕事を探す意思」を示すことが、お金をもらうための大前提になります。

2.あなたの「経済的な滑走路」を計算してみよう

起業準備中の生活を支えるお金が、どのくらいの期間、いくらもらえるのかを具体的に計算してみましょう。

もらえる期間はどれくらい?(所定給付日数)

基本手当がもらえる日数のことを「所定給付日数」と呼びます。これは、年齢や雇用保険に入っていた期間、辞めた理由によって90日〜330日の間で決まります。

今回は計画的な自己都合退職を前提としているので、下の表を見てみましょう。

表1:自己都合で退職した場合にもらえる日数

雇用保険に入っていた期間もらえる日数(所定給付日数)
1年以上10年未満90日
10年以上20年未満120日
20年以上150日

出典:厚生労働省の資料を基に作成

この表が、あなたの「経済的な滑走路」の長さを知るための基本です。たとえば、雇用保険に8年間入っていたなら、もらえる日数は90日(約3ヶ月)。この期間をベースに、退職後の資金計画を具体的に立てていきましょう。

1日あたり、いくらもらえるの?(基本手当日額)

1日あたりにもらえる金額は「基本手当日額」と呼ばれ、次の式で計算されます。

基本手当日額=賃金日額×給付率(50%〜80%)

  • 賃金日額
    ざっくり言うと、退職直前6ヶ月間の給料(ボーナスは除く)の合計を180で割った金額です。
  • 給付率
    お給料が比較的低かった人ほど高い率(最大80%)が、高かった人ほど低い率(約50%)が適用される仕組みになっています。

基本手当日額には上限と下限がありますが、自分の給与明細からおおよその金額を計算できます。この1日あたりの金額に、先ほどの「もらえる日数」を掛ければ、もらえる総額の見通しが立ちます。

実行フェーズ:退職後の手続きをスムーズに進めよう

いよいよ会社を退職し、公的制度を活用する実行フェーズです。

この段階では、ハローワークでの手続きをミスなく進めることと、担当者の方とのコミュニケーションが成功のカギを握ります。

1.ハローワーク手続きの完全ガイド

手続きは決められた順番通り、スピーディーに行いましょう。

ステップ1:ハローワークで求職申込み

退職したら、まずはお住まいの地域を管轄するハローワークへ行きます。最初のステップは「求職の申込み」です。その際、以下の書類が必要なので、事前に準備しておきましょう。

  • 雇用保険被保険者離職票(-1、-2):会社から郵送されてきます。
  • マイナンバーが確認できる書類(マイナンバーカードなど)
  • 身元が確認できる書類(運転免許証など)
  • 証明写真(規定サイズ2枚)
  • 本人名義の預金通帳かキャッシュカード

書類を提出して、失業保険をもらう条件を満たしていることが確認されると、その日が「受給資格決定日」となります。

ステップ2:超重要!「7日間の待期期間」

受給資格が決まった日から7日間は「待期期間」と呼ばれます。この期間は、ハローワークが「この人は本当に失業状態にあるか」を確認するためのもので、この間は失業保険は支給されません。

この7日間は、絶対に働いてはいけません(アルバイトや手伝いもNGです)。 もしこの期間に少しでも働いて収入を得てしまうと、その分だけ待期期間が延長され、給付の開始が遅れてしまいます。スムーズに計画を進めるためにも、この7日間は完全に「無職」の状態をキープしましょう。

ステップ3:雇用保険受給者初回説明会

待期期間が終わると、指定された日時に開催される説明会に参加します(参加は必須です)。

ここで、制度の詳しい説明を受けたり、「雇用保険受給資格者証」や「失業認定申告書」といった大切な書類を受け取ったりします。

ステップ4:失業認定のサイクル

基本手当は、原則として4週間に1度やってくる「失業認定日」にハローワークへ行き、「失業の認定」を受けることで、前の28日分がまとめて振り込まれる仕組みです。

認定を受けるには、「失業認定申告書」に、この4週間でどんな求職活動をしたかを具体的に書いて提出する必要があります。

2.ハローワーク担当者とのうまい付き合い方

起業を目指す人が失業保険をもらう上で、一番デリケートな部分が、ハローワークの担当者とのコミュニケーションです。

「公式なスタンス」を伝えよう

窓口では、正直に、かつ戦略的に自分の状況を伝えることが大切です。「起業一本で、就職する気はありません!」とストレートに言ってしまうと、「仕事を探す意思がない」と判断され、失業保険がもらえなくなる可能性が高くなります。

ここでおすすめしたいスタンスは、「起業も選択肢の一つとして考えているが、まずは再就職を目指して活動している」という伝え方です。これは嘘ではなく、複数の選択肢を検討しているという事実を、制度のルールに沿った形で表現する賢いコミュニケーション術。この姿勢でいることで、担当者の方も理解しやすくなります。

「求職活動」を起業準備に活かそう!

失業認定を受けるには、4週間の間に原則2回以上の「求職活動実績」が必要です。これを単なる義務と捉えるのではなく、あなたの起業準備を加速させるチャンスと捉えましょう。

やみくもに求人に応募するのではなく、起業準備にも役立つ活動を意図的に選ぶのがポイントです。

たとえば、以下のような活動は、正当な求職活動として認められつつ、あなたのビジネスに必要な知識や人脈づくりに直結します。

  • 求職活動として認められる活動の例
    • ハローワークの専門相談員に相談する(起業に関する相談もOK!)
    • 自治体や商工会議所が主催する創業セミナーに参加する
    • 公的な創業支援窓口でアドバイスをもらう

ただし、自分の事業に直接関わる活動(仕入先との商談や自社サイトの制作など)は、求職活動とは見なされないので注意してください。

このように、公的な創業支援プログラムをうまく活用すれば、ルールを守りながら、無料で専門的な知識を得ることができます。

失業保険をもらっている期間を、ただ生活するためだけの期間ではなく、「公的資金でサポートされた、あなたのための起業準備期間」と捉え、最大限に活用しましょう!

ゴール!「再就職手当」でスタート資金を確保しよう

いよいよこの戦略の最終目標であり、最大のボーナスが待っているフェーズです。

ここでは、残りの失業保険をもらう権利を、事業開始のための一時金「再就職手当」にチェンジします。

1.ただお金をもらう人から、資金調達する人へ

再就職手当とは、失業保険をもらっている人が、給付日数をたくさん残して早めに安定した仕事に就いた場合(自分で事業を始めた場合も含む)にもらえる、お祝い金のようなものです。

これを計画的にもらうことで、事業開始直後の運転資金を増やし、スタートアップ期の経営を安定させることができます。

2.起業家がクリアすべき厳しい受給条件

再就職手当を起業によってもらうには、以下の条件をすべてクリアする必要があります。一つでも欠けると対象外になってしまうので、慎重に計画を進めましょう。

  • タイミングが命!
    事業の開始日(個人事業主なら「開業届」を税務署に出す日)は、必ず7日間の待期期間が終わった後でなければなりません。
  • 給付制限期間の特別ルール
    自己都合で退職した場合、待期期間が終わった後に「給付制限期間」があります。給付制限期間は、5年間のうち2回までの自己都合退職であれば1ヶ月、3回目以降の自己都合退職の場合は2ヶ月です(令和2年10月改正)。 給付制限期間の最初の1ヶ月間に事業を始めてしまうと、再就職手当はもらえません。つまり、初回または2回目の自己都合退職の場合、事業を始めるのは、待期期間(7日間)が終わってさらに1ヶ月が経過した後ということになります。
  • もらえる日数を残しておくこと
    事業を始める日の前日時点で、失業保険の支給残日数が、もともと決まっていた日数の3分の1以上残っている必要があります。
  • 事業の安定性を証明する(最重要関門!)
    ハローワークに対して、あなたの事業が1年を超えて安定的に続けられるということを、客観的な証拠で納得させる必要があります。これが、起業家が再就職手当をもらう上での最大のハードルです。
    具体的には、詳細な事業計画書、取引先との契約書(年間契約など、長期的な関係が分かるものがベスト!)、オフィスやお店の賃貸契約書などです。これらの書類で、あなたの事業が単なる思いつきではなく、しっかりとした計画に基づいていることをアピールしましょう。

3.申請手続きと支給額の計算方法

申請手続き

開業届を税務署に提出するなどして事業を始めたら、すぐにハローワークに報告し、「再就職手当支給申請書」に開業届の控えなどを添付して提出します。

その後、ハローワークで審査が行われ、支給が決まります。

もらえる金額の計算方法

もらえる金額は、事業を始めた時点での支給残日数によって、以下の式で計算されます。

  • 支給残日数が所定給付日数の3分の2以上残っている場合: 支給額=支給残日数×基本手当日額×70%
  • 支給残日数が所定給付日数の3分の1以上、3分の2未満の場合: 支給額=支給残日数×基本手当日額×60%

この式を見ても分かる通り、早く事業を始めるほど、もらえる金額は大きくなります。ただし、先ほどの給付制限期間のルールもあるので、タイミングは慎重に判断しましょう。

下の表は、具体的なシナリオで、事業開始のタイミングがもらえる金額にどう影響するかを示したものです。

表2:再就職手当の支給額シミュレーション

シナリオ(A) もともとの給付日数(B) 事業開始前の支給残日数(B) / (A) の割合(C) 給付率支給額の計算式 (基本手当日額をD円とする)
190日70日77.8% (≧ 2/3)70%70×D×0.7
290日45日50.0% (< 2/3)60%45×D×0.6
3120日90日75.0% (≧ 2/3)70%90×D×0.7
4120日50日41.7% (< 2/3)60%50×D×0.6

出典:厚生労働省の資料等に基づき作成

このシミュレーションは、いつ事業を始めるかという戦略的な判断の助けになります。

例えばシナリオ1と2を比べると、25日間長く失業保険をもらい続けるか、早めに事業を始めて高い給付率の一時金をもらうか、という選択肢があることが分かります。

あなたの資金状況や事業の進み具合に合わせて、ベストなタイミングを見極めましょう。

結論:ルールを守って、賢く起業家になろう!

この記事でご紹介した戦略は、単に公的な制度をうまく使う方法というだけではありません。会社員という安定した立場から、起業家へとスムーズに移行するための、ルールに基づいた賢いアプローチです。

フェーズ I(準備)では、会社員のメリットをフル活用して、事業の土台となるお金、計画、そして公的な手続きに必要な証拠を準備します。

フェーズ II(移行)では、雇用保険のルールを正しく理解し、失業保険をもらいながら経済的な安定を保ちつつ、スキルアップや人脈づくりを進めます。

フェーズ III(スタート&資金確保)では、これまでの準備を元に、再就職手当という形でまとまった事業資金を手に入れ、力強いスタートを切ります。

この一連のプロセスは、多くの起業家が直面する「資金不足」という最大のリスクを、社会の仕組みを賢く利用することで乗り越える方法です。

起業を「ギャンブル」ではなく、計算された「マネジメント」に変える試みだと言えるでしょう。

この道は、近道ではないかもしれません。しかし、とても着実で、何よりも賢い方法です。

慎重な計画とルールに沿った実行を通じて、リスクを最小限に抑え、あなたのビジネスの土台を築く。これこそが、今の時代の会社員が選べる、最もスマートな起業への第一歩ではないでしょうか。

【再度のご注意】
本記事で紹介した戦略は、雇用保険制度を正しく理解し、ルールに則って活用する方法です。制度の濫用や不正受給は決して行わないでください。また、雇用保険制度は法改正により内容が変更される可能性があります。実際に行動を起こす前には、必ずハローワークで最新の情報を確認し、不明な点は窓口で相談することを強くお勧めします。

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この記事の監修者・著者

2006年に起業。合同会社を設立するも2年後に株式会社へ組織変更。社員2人〜4人の小さな会社を5年間経営後、一人会社・一人社長へ。一人社長歴15年。

ソエルコト(一人会社・小さな会社の社長さんの経営パートナー)、マナブコト(習い事教室・学習塾の生徒募集)、ホームページ作成教室など、様々なスモールビジネスを展開中。一人会社・小さな会社の社長さんの支援実績も豊富で、日本全国にクライアントがいます。

大変なこと・辛いことをたくさん経験してきた小さな会社の社長として、一人社長を長くやってきた先輩として、そして一人会社研究家として、お役立ち記事を監修・執筆しています。

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